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この記事は「 COMPARING DRUPAL AND ADOBE EXPERIENCE MANAGER, PART 1 OF 2 」の翻訳です。
この記事の目次

はじめに

特徴、機能性、コストという観点で、一般的にも導入しやすいエンタープライズ向けのCMSがあります。組織の要望に照らし合わせると、どのCMSもそれぞれの強みや弱みがあり、当然のように導入企業は、どのCMSを導入するか決める前にエージェンシーに相談します。

一つ注目すべき調査サポートがあります。世界的ICTアドバイザリ企業 ガートナー社が毎年行う「マジック・クアドラント」のエンタープライズ向けCMSに関する調査です。最新の調査では、Acquia/Drupal、Adobe Experience Manager (AEM)、Sitecoreが、ビジョン遂行力や組織的な要望への対応力の高さから、このフィールドにおけるリーダーだと発表されました。これら3つのCMS詳細を調査することを目的として、今回はDrupalとAdobe Experience Managerの機能比較を行いたいと思います。

どのようにこれらを比較するのかということは、ステークホルダーの視点に大きく依存します。ここでいうステークホルダーとはコンテンツ編集者、マーケター、開発者、決裁者などです。今回のこの記事では、DrupalとAdobe Experience Managerの比較を「コンテンツ編集者の視点」「マーケターの視点」「ビジネス視点」の3つの視点から比較したいと思います。

(関連記事:「CMS機能比較 DrupalかWordPressか?- 最適なWebプラットフォームを選択する方法」

コンテンツ編集者の視点

AEMの大きな強みはコンテンツ編集者のユーザー体験が素晴らしい点です。個人向けのサイトビルダーツールであるSquarespaceやWixのことを知っている方は、AEMのオーサリング体験はそれらにとても近く、さらに色々設定が可能になっています。AEMの特徴は、日々対応するコンテンツ編集タスクのためにハイレベルに柔軟で、ドラッグ&ドロップなどで編集ができるユーザーインターフェースと、Adobe者が持つそのほかのテクノロジーとの緊密な連携になります。ここで、記事の編集例をご紹介します。コンテンツ編集者は、AEMにたくさんあるテンプレートの中から好きなものを選んで記事を書き始めることができます。記事中のコンテンツはAdobe社が「コンテンツフラグメンツ」と呼ぶ機能で編集できます。それらはテキスト、画像、そのほかメディアなどの小さいコンテンツで、記事中にドラッグして追加でき、どの記事にでも再利用できます。そしてそれらは、インラインで編集できるようになっています。画像、ビデオ、インタラクティブなJavascriptウィジェットなどを含む日テキストのアイテムもドラッグで追加できます。下の画像はその例になります。

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ユーザーが画像をメインボディにドラッグしている例

これはとても印象的な機能です。Drupalでは、モジュールを組みわせて導入することで同じようなことができるようになります。ドラッグ&ドロップ機能はPanelsモジュールかAcquiaのLift Connectorモジュールに付随しているLiftというサービスを使って導入可能です。

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Acquia Liftのドラッグドロップ機能UIはAEMのそれにとても似ている

AEMの例では、コンテンツは巨大なボディになっているというよりは、小さな塊に分解されているということを覚えていただいただきたいです。このことにより、より細かい粒度でコンテンツを管理・再利用できるということになります。Drupalでは、巨大なコンテンツの塊はParagraphsモジュールによって分解できます。このモジュールはそれぞれ独立し、事前定義されたパラグラフタイプをその場で選ぶことができます。

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Paragraphモジュールの例、パラグラフレベルでの編集と管理ができます

Drupalのエンティティー構築キットは、より粒度が細かい編集やコンテンツの再利用をするためのもう一つの手段になります。

AEMはフル編集画面に行かず、ビューモードでもコンテンツの編集ができます。

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AEMのインライン編集画面

Drupalの同系機能はQuick Editモジュールで、同じようにページ上で編集ができます。

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Drupalのクイック編集モードはページ上で編集が可能

話は変わって、AEMはコンテンツリストをDrupalでいうViewsのように表示し、リスト、サムネイルなどで表示できるようになっています。しかしこれらの表示は別の方法で生成されています。AEMのこの機能のことはCollectionsと呼ばれ、コンテンツをフォルダ管理するようなイメージの機能です。アイテムをCollectionに追加するために、AEMユーザーはそこにアイテムをドラッグして使います。

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アイテムをCollectionに追加する様子

AEMのCollectionが作られると、リストやサムネイルなどで表示できるようになります。サムネイルの例はこちらです。

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サムネイル例

Collectionはファイルタイプ、ファイルサイズ、最新更新日などでフィルタする機能があります。

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Collectionのフィルター機能

DrupalのViewsモジュールはアプローチが少し違います。Viewsはデータベースクエリを通じてデータを呼び出す方式です。かなりしっかりしたコンテンツを構造化するためのフィルタ機能が備わっていて、AEMのようにリストやサムネイルを出力できるようになっています。AEMが持つ機能よりもパワフルですが、導入には時間という代償を払わなければなりません。ViewsはDrupalの中で最も素晴らしく、人気の機能です。なので、Drupal 8のコアに採用されています。

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Views設定画面

AEMは見やすいビジュアルサイトマップ機能があり、Drupalが持つテキストベースのSitemapモジュールよりも視覚的に見やすいです。

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AEMのサイトマップ機能

しかし、DrupalのSitemapモジュールにはSlickmapのようなCSSライブラリを設置できるので、サイトマップをよりグラフィカルにすることも可能です。

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SitemapにCSSライブラリを設置した例

AEMのそのほかの強みはレイアウトマネージャー機能で、ページ場上でレイアウトの編集ができます。ページを去ることなくその場でグリッドレイアウトの変更ができます。ユーザーは自分好みの編集ができるので革新的です。冒頭にお伝えしたように、Wixのような個人向けページマネージャーのような使い心地です。

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AEMのレイアウト設定

カスタムコーディングではない形でレイアウト管理することについては、DrupalではPanelsモジュールを使って行い、ユーザーは好みのレイアウトを選んで設定することができます。

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Panelsモジュールでレイアウト変更

(関連記事:「詳細解説:Drupalサイトを静的HTML(Static HTML)に変換する方法」

マーケターの視点から

AEMはAdobe Marketing Cloud(AMC)と連携します。AMCの能力を最大限に活かしながらシームレスにつながります。AMCのマーケティング昨日やその能力について語ることはこの記事のテーマからは外れますが、ユーザー自身が入力したプロフィールデータやユーザー行動の分析両方を使って、高いレベルでパーソナライズされたユーザー体験を提供します。このような体験は複数チャネル全体で最適化されて提供されます。ユーザー分析などのためにAEMはAMCと連携することができます。

しかし、このシームレスでパワフルに連携することには相当なコストがかかり、AMC導入の追加費用として考える必要があります。MarketoやPardotといったマーケティングソリューションと連携することはAEMにとって最適な作ではありません。なぜなら、シームレスに連携できず、AMCにマサル機能性を得ることは難しいからです。Drupalはそれとは対照的に、オープンソースプラットフォームとして主要なMAツールと問題なく連携でき、企業の利用用途に応じて活躍します。

eコマースの能力についてはほぼ同じです。eコマース機能付きのCMSは素晴らしくパーソナライズされたショッピング体験をすることができます。Adobe社のソリューションを使えば、製品情報をAdobeのコマースエンジンかたAEMにインポートすることができ、一度AEMに情報が入ると、ほかのコンテンツ群と同じように情報を扱うことができます。Drupalでは、Acquiaとも提携している最高の組み合わせなオープンソースソリューションのMagentoとの連携が可能です。もう一つの方法はDrupal Commerce suiteというモジュール類を使う方法です。Drupal Commerce suiteはコマースサイトを行うには十分な機能が揃っています。DrupalもAdobeも以下のような機能を提供しています。

  • アフィリエイトトラッキング
  • 在庫管理
  • 決済機能
  • 配送機能
  • 税金
  • 販売時点管理
  • カート
  • ユーザー登録
  • ウィッシュリスト

簡単に言えば、カスタマイズ性は多くのマーケティング担当者に適用される機能と言ってもいいと思います。オープンプラットフォームとして、開発者より提供されたたくさんのモジュールやDrupal 8だけでも3000を超えるモジュールが証明しているように、Drupalはカスタマイズされるものとして開発されたフレームワークです。プロプラシステムでは、ソースコードがロックされていて、大規模のカスタマイズには向いていません。

ビジネス視点から

CMSがどれぐらい自社の要望に沿っているかを評価することに加えて、決裁者は費用対効果についても評価しなければなりません。Drupalと提供されるモジュールは無料ですが、AEMは結構なライセンス料がかかります。AEM導入にかかる費用は、100万ドル程度のの開発費用に加え、ライセンス料に6桁ドル中盤のコストがかかります。AMCのようなほかのAdobe製品を追加することにも追加ライセンス料がかかります。Adobe社製品の導入を検討する組織は、費用対効果が見込めるのかを検討しなければなりません。Adobe社のサイトではRCS MediaGroup、Franke Group、and Skylarkといった大組織が利用していると紹介されています。

Drupalはオープンソースだからと言ってそういったお金がかからない、というわけではありません。AEMのように導入するための開発費やホスティング費用がかかります。しかし大きな違いは、どの金額感でもホスティングできるという選択肢が広い点です。例えばクライアント様がAcquia Liftをご利用になりたい場合、そのための登録費がかかります。LiftはSitecoreの同系機能と比較して、前述したようなドラッグ&ドロップでの編集機能などで、コンテンツ編集者に素晴らしいユーザー体験を提供しています。Liftの機能は、どの組織にもライセンス費用として払う価値のある機能ばかりで、AEMと比較しても競争力があります。

決裁者の悩みの種は、ソフトウエアの背後にいるサポート体制や、サポートスタッフの返事の速さです。オープンソースCMS初期の頃は、決裁者はプロプラ製品に投資をする傾向が強かったです。なぜならもし何か問題が起きた時に、そのソフトの開発チームに電話で連絡でき問題に対処できたからです。

Drupalに関しては同じことは起こりません。なぜかというと、技術的に難解ではない問題だった場合、高度にスケーラブルで高可用性のDrupalソリューションのホスティングとサービスの実績があるサービスが数多くあるので、問題に対処しやすいです。高度技術問題の場合、Drupalコアと通常使われているモジュール類は完全にユニットテスト済みで、セキュリティの脆弱性については専門のセキュリティ対策チームにより即座にレポートされます。このような利点により、The Weather Company, Travelport, MagMutualなどの大企業の皆様でDrupalが成功事例になりました。

終わりに

いかがでしたか?この記事では詳細まで紹介されませんでしたが、やはりAdobe製品の強みはマーケティングクラウドとの連携機能だと思います。その人にパーソナライズされた体験を提供でき、Adobe製品同士の連携がスムーズでシームレスである点は、Adobe製品ならではの特徴だと思います。

一方Drupalもオープンソースならではのほかツールとの連携のしやすさや、データを構造化して持っている分、コンテンツの管理から再利用もしやすい点が特徴だと思います。ぜひ参考にしてみてください。

 
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この記事を書いた人: Kentaro Inoue

ANNAI株式会社
マーケティングマネージャー
サービスの設計・企画、マーケティング、採用戦略の立案などを担当。普段は新潟で猫と一緒に、時々海外からリモートで働いています。好きなモジュールはRulesとFlagです。

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