自己紹介をお願いします
コスタリカにあるDrupal専門開発会社、anexusの共同創業者で、会社を7年経営しています。ラテンアメリカ8カ国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、コスタリカ、コロンビア、エクアドル、メキシコ、ペルー)に36名のDrupal開発者を揃え、アメリカ、カナダ、イギリスのクライアント様にDrupalにて開発したシステムを提供しています。
また、別の会社でweKnowという会社も共同経営しています。weKnowではDrupalやSymfonyでのシステム開発に関する教育、コンサルティング事業を行なっています。
近くアメリカ・ボルティモアにて開催されるDrupalCon Baltimoreでは、Drupal 8開発のマスターコーストレーニングを主催しています。おかげさまで予約満席になりました。
家族のために達成したい夢があって、そのために最近オーストラリア シドニーに移住し、生活を始めました。
仕事の生産性について(オフィス vs リモート)
リモートで働くということは、気をつけるポイントがたくさんあると思います。まず、自分の責任をしっかり全うすること、仕事以外で妨げになることを防ぐため、自分のワークスペースもうまく管理するべきだと思います。
電話や会議が仕事を止めるなど、オフィスワークをする人にも同じことが当てはまりますが、自宅をオフィスにしていると、テレビやゲームなど、仕事を妨げる要素は色々あるので、そのあたりをしっかり管理しない人はうまくできないのではないでしょうか。
リモートワークで効率的に働くためには、自分なりのルーチンを持ったほうがいい、という人もいますね。
これまで経営者として、スタッフの意見を色々聞くこともありました。中には「やはりオフィスに行って仕事をしたい」と言って会社をやめた人もいます。そういう意見もあっていいと思います。合うか合わないかは人によるんだと思います。
ただ大都市で働く人のことを考えると、通勤時のストレス、などの観点でリモートワークは有効なのではないかと思います。
通勤時間がないことについて
住んでいる街にもよりますが、僕の場合は通勤がないことで1日に3-4時間の時間が増えると考えています。そのインパクトを考えると、通勤がないことの意味は大きいと思います。
例えばストレス軽減、交通費削減による家計の向上、家族との時間が増えて人生そのものが良くなっていく、そんな風に感じます。
生活の自由度について
新しく入社した開発者がプロジェクトにアサインをされると、まず最初にその人がするべきことは、チームからの信頼を得ることです。もちろん最初は営業時間に稼働することが必要だと思いますが、信頼を得ていけば、自分で勤務時間管理ができるようになります。
人によっては家族のニーズにあったタイムシフトで働く人もいます。弊社のスタッフの話を共有しましょう。
あるスタッフは、シングルファーザーとして一人で子供を育てています。朝7時ごろから子供を学校へ送るためのもろもろ(食事など)を行い、朝10時から仕事を始めます。5時間働いた後に学校に子供を迎えに行って、子供の世話を行なった後にまた仕事に戻り、その日のうちにやるべき仕事をします。だいたい仕事を終えるのは夜8時頃でしょうか。
プロフェッショナルとしてしっかり仕事にも取り組んで、親としてもしっかり役割を果たしている。そういうことができるのがリモートワークのいいところだと思います。
ポイントは、チームから信頼されているからこそそういう働き方ができる、ということだと思います。自己管理をしっかりして、不在にしないといけない時はチームに報告し、それでも今日までにやるべき仕事を終える。そういうことが大事なんだと思います。プロ意識とはそういうものだと思うし、それがないと、リモートワークはできないと思います。
弊社では、スタッフにマイクロマネジメント(過干渉)をしないと決めています。なぜならそういうことが嫌いだからです。しない代わりにスタッフにはこう伝えています。「君はプロフェッショナルだ。君は仕事の仕方というものを理解している。だからプロとして仕事を進めて行って欲しい」5分おきに背後から進捗を確認するような、ダメな上司なんて必要ないのです。
ラテンアメリカの企業は給料を月2回に分けて支払うケースが多いのですが、給料日はだいたいスーパーが混み合います。でもうちのスタッフには、プロフェッショナルな働き方をして、わざわざ混んでいる時期に買い物しなくてもいいように自己管理すべきだと言っています。みんなと同じ時間にスーパーに行っても、買いたいものがなくなってるだけじゃないですか。
離れた場所にいる人と働くことについて
弊社ではスタッフが8カ国にいて、例えばメキシコとアルゼンチンは4時間の時差があります。でも少なくとも3-4時間は、オンラインでつながっている状態で働くことを基本ルールとしています。もちろん難しい時もありますが、それを基本としています。お互い協力しながら時間を合わせるケースもあります。
複数拠点にいる開発スタッフが成果を出すポイントはコミュニケーション力にあると思っています。開発現場では、ツールを使ってタスクを「チケット」として発行すると思いますが、ここで成果を出すコミュニケーションと出さないコミュニケーションを紹介します。
成果を出さないコミュニケーション
チケット A : チケットの意味がわかりません
成果を出すコミュニケーション
チケット A : 僕が理解しているのはBまでなので、当面の間はBに取り組みます。そのあとCに取り組みます。その間にAの回答を待ちたいと思いますので、わからない部分へのサポートをお願いします。
ポイントは、その人が先回りして仕事しているかどうかだと思います。
リモートワークをよくするために心がけていることは?
スタッフにはプライベートと仕事を切り分けて、充実した人生を送って欲しい(切り分けるべきと思っている)ので、会社としてもコミュニケーションツールを公私混同しないようにしています。Skypeだと公私混同する可能性があり、いつまでも仕事モードが途切れずスタッフによくない影響を与えるかもしれません。
ビジネスのやりとりツールはFlowdockに統一しています。グループチャットでやりとりをするので、家で一人で働いていても、チームで働いていることを認識できるし、便利だと思います。
Flowdockまた、チームのタイムゾーンを確認するのにはFigure it outというChromeの拡張機能を使っています。結構便利ですよ。
Figure it out
Drupalはグローバルなコミュニティで、スタッフの成長機会はDrupalコミュニティの中にもあると思っています。予算の許す限り、DrupalConのような大型イベントにスタッフと一緒に行き、普段会えないスタッフ同士で一緒の時間を過ごすと、ものすごく成長するケースもありますね。
個人的に僕自身も旅が好きで、新しい環境でリラックスしたり、やったことがないことを経験することで成長を感じるので、同じ体験をスタッフにも提供したい、という思いがあります。
日本のDrupalコミュニティの皆さんにメッセージがあればお願いします
複数の拠点にまたがるスタッフ同士が共に働くことは素晴らしいソリューションだと思います。リモートワークできるスタッフを雇用することは、素晴らしい才能を持ったスタッフを雇用することにもつながります。なぜなら地理的な制約がないからです。
例えば長崎に本社を構える会社が北海道のスタッフを雇用してビジネスを加速することができます。恐れずにそういう働き方を進めてみましょう。大切なことは、限られた地域で能力の劣るスタッフを雇うことよりも、地理的な制約を無くして、素晴らしい才能をもつスタッフを雇用したほうがみんなにとっていい、ということです。
終わりに
EnzoさんはDrupalコミュニティの中でも精力的に活動する方です。普段はビジネス上のやりとりが多い中、彼の人材育成に対する考え方を聞くことができたのは非常に有意義だったと思います。
日本でもリモートワークという言葉が徐々に聞かれるようになってきました。今回Enzoさんから学んだのはマイクロマネジメント(過干渉)をすることなく、いかにしてチームメイトの能力を最大化するのか、といった部分でした。
自身の経験に基づいて良いと思う方法を実践されている点が印象的でした。それができるのは、選考段階で会社のカルチャーに合いそうな方を採用されているからかもしれないな、と思います。自社の考え方にフィットする形でリモートワークのあるべき姿を模索していきたいものです。
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