ANNAIマガジン
DrupalCamp Tokyo 2026 参加レポート
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DrupalCamp Tokyo 2026」が2026年6月27日(土)、SCSK株式会社 豊洲フロントにて開催されました。テーマは「奈良から東京へ:Drupal、次なるフェーズへ」。台風接近という不安定な天候のなか、3トラック・約30セッションが行われました。

一日を通して参加し感じたのは、技術そのものの新しさよりも、「その技術で事業や業務をどう動かすか」へ関心の重心が移っていたことです。AIをどう業務に取り込むか、大企業が既存の仕組みとどう折り合いをつけるか——具体的な"現場"の話が目立ちました。本記事では、イベント全体を通じて特に注目したセッションを、事業目線で紹介します。(ANNAIの登壇セッションについてはこちらで詳しく掲載。)

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画面越しの基調講演——「AIエージェントが使うCMS」

開会後、Drupal創設者Dries Buytaert氏のビデオメッセージに続き、FreelyGive共同創業者のJames Abrahams氏が基調講演に立ちました。氏は会場には現れず、ビデオ通話越しに「Drupal - The best CMS for your agents to use!(あなたのエージェントが使うのに最適なCMS)」と題して語りました。CMSを、人間だけでなくAIエージェントが読み書きする対象として捉え直す——という視点の提示です。海外のキーパーソンが画面の向こうから会場に語りかける光景そのものが、Drupalコミュニティの国際性を感じさせました。この「AIとどう向き合うか」という問いは、この日の多くのセッションに通底していたように思います。

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「コードは書くな、フローを語れ」——プロンプト指向プログラミング

その問いに、もっとも具体的な形で答えていたのが、DOCOMO Innovations, Inc. 直井康広氏のセッション「コードは書くな、フローを語れ!」でした。掲げられていたのは「プロンプト指向プログラミング(POP)」という考え方です。従来のDrupalによるWebアプリが、ウェブUIやYAML設定ファイルを介してDrupalコアでHTMLやJSONを生成するのに対し、氏が示した「YAMLファースト」のアプローチでは、スクリーンショットやURLをチャットUIに投げると、YAMLで書かれた"ブループリント"と生成AIが処理を担い、必要な出力を返します。

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肝は、業務ロジックをコードとして書き下すのではなく、YAMLで"語る"点です。処理の役割(抽出・分類・検証など)と、「どんな前提のとき(Given)、何をきっかけに(When)、何をするか(Then)」を仕様として書き並べていく。たとえば出張費の処理なら、「出張先の国や地名からレベルを判定して宿泊費の上限を決める」「金額を切り上げてドルに換算する」といったロジックを、コードを書かずに組み立てられる、という具合です。実際に社内の備品購入では、担当者がAmazonの購入画面のスクリーンショットを送るだけで申請から承認まで完了し、人の手が介在するのはAIが読み取った内容の確認だけ、という例も示されていました。

もう一つ印象に残ったのが、生成AIの"精度"をめぐる話です。AIに任せると、テストの成功率はなかなか100%には届きません。しかし膨大な数の修正を積み重ねることで、最終的に成功率100%まで引き上げたといいます。AIは大部分を一気に片づけてくれる一方で、最後の"100%"に到達するには地道な作業が要る——生成AIの実像を率直に語ってくれた点が印象的でした。

正直に言えば、自分自身も日々AIを使ってはいるものの、"業務そのものをAIに載せ替える"というこのレベル感は、個人的な使い方とは段違いだと感じました。AIを「便利な道具」として使うことと、「業務プロセスそのものを設計し直す道具」として使うことの間には、まだ大きな開きがある。活用の幅をもっと広げていかなければ、と自分の課題を突きつけられたようなセッションでした。

大企業の現場——既にある仕組みと、どう折り合うか

エンタープライズでのDrupal導入は、「ゼロから作る」よりも「既にある仕組みと、どう折り合いをつけるか」が勝負どころになる。そう感じさせる事例が続きました。

トランス・コスモス株式会社 今本優吾氏による「国内BtoB向けECの構築&運用事例から考えるDrupalの強み」は、その意味でとても腑に落ちる内容でした。氏がまず挙げたのは、日本のBtoB ECならではの難しさです。サブスクリプション商品や法人プランのように、従来のECシステムでは対応が難しいケースが少なくない。しかも日本の大企業はすでに基幹システムを持っていることが多く、それを活かしながらデータ連携や不足している機能の拡張が求められる。一般的なECパッケージは制約が多く、そのままでは要件に合致せず、拡張も容易ではない——という現実です。

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これに対してDrupalの強みとして示されたのが、公開されたEC用モジュールによる拡張のしやすさ、そして「基幹システムを改修せずに、Drupal側で要件を実現できる」柔軟性でした。各データを分離して管理することで施策を打ちやすく、バージョンアップや脆弱性への対応も含めて安心して運用できる。「既存の基幹システムを活かしたまま、柔軟かつ堅牢に要件を実現する」という一言が、この事例の核だったように思います。

セッションの後半では、同社のDrupalプロダクト「trans-CMS」も紹介されました。Drupalコアを土台に、運用ノウハウを結集した独自機能や、Salesforce・LINE・KARTEといった外部ツールとの連携を標準搭載し、その上に顧客ごとのカスタマイズを載せる——という三層構成です。Drupalの拡張性を活かしつつ、運用や集客に必要な機能をあらかじめ備えることで、導入企業が本来のビジネスに集中できるようにする、という発想が印象的でした。

もう一つ、大企業ならではの重みを感じたのが、コクヨ株式会社の「120周年『ワンコクヨ』を旗印に、全ての事業領域サイトを統合リニューアル」です。創立120周年を機に、「文具・家具・空間・通販・コーポレート」という5つの事業領域のサイトを、「ワンコクヨ」のスローガンのもとDrupal基盤に統合した、という取り組みでした。分かれていた事業サイト群を一つの基盤に束ねるというのは、まさにDrupalが"事業基盤"として選ばれた好例といえます。

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印象的だったのは、システムを構築したSCSK株式会社だけでなく、発注側であるコクヨの担当者も登壇し、統合の"苦労話"を率直に語っていたことです。5つの事業領域を一つに束ねる取り組みには、技術的な難しさ以上に、社内の調整や合意形成の重さが伴います。発注側の生の声が聞けたことで、大企業のサイト統合のリアルが伝わってくるセッションでした。

懇親会——画面の向こうにいた「人」と、初めて

セッション終了後には懇親会が開かれ、登壇者や参加者が入り混じって語り合いました。私自身はCSという立場で、普段は画面越しやテキストでやり取りしている方々と、初めて直接、同じ場の空気のなかで言葉を交わすことができました。これは想像していた以上に嬉しい経験でした。

そして何より印象的だったのは、本来であれば競合とも言える各社・各人が、垣根なくこれだけ活発に交流していることです。技術や知見を惜しみなく共有し合い、時に一緒に頭を悩ませる——そうした空気が自然に生まれるのは、やはりDrupalがオープンソースであることと、どこかで繋がっているのかもしれない。そんなことを感じた時間でした。

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まとめ——「次のフェーズ」は、事業に溶け込むこと

DrupalCon Nara 2025から続く「次のフェーズ」というテーマは、東京では、技術の新しさそのものより、それを事業や業務にどう溶け込ませるかという実務的な色合いで語られていたように思います。AIを業務プロセスに載せる話、既存の基幹システムと折り合いをつける話、事業横断の統合に伴う苦労話——どれも、事業を動かす立場から見て"自分ごと"として持ち帰れる内容でした。個人的にも、AIの活用度をもっと上げていかなければ、と刺激を受けた一日でした。

会場を提供いただいたSCSK株式会社、そして企画・運営にあたられた実行委員会の皆さまに、あらためて感謝申し上げます。

【写真クレジット】
イベント名:DrupalCamp Tokyo 2026
ライセンス:CC BY-SA 4.0
https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.ja

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この記事を書いた人: Takanobu Kakinoki

ANNAIのカスタマーサクセス担当。よく喋る、よく歌う、あとハリネズミが好き