ANNAIマガジン
discovery
この記事は「 Beyond Discovery: Designing a More Valuable Phase One 」の翻訳です。
この記事の目次

 

課題発見セッションを超えて:より価値のある第1フェーズをデザインする

あなたがもし自社サイトのリデザイン、再構築、その他たくさんのタスクをしてもらうためにベンダーと契約したら、「ディスカバリー(課題発見セッション)」と呼ばれる第1フェーズに対して投資をするかどうかを検討しなければならなかったと思います。この記事では、ディスカバリーと呼ばれるものに投資することについてなぜあなたが神経質になることが間違っていないかについて書いています。また、その投資対効果を良いものにするために第1フェーズでベンダーに対して求めるべき内容についてもご紹介しています。

ディスカバリーとは何か?どこからきたものなのか?

私の知る限り、プロフェッショナルサービスにおける「ディスカバリー」という言葉の起源は法律実務の時に使用されていました。そこではこのように定義されています。

ディスカバリーは裁判にて目撃者と証拠のについて原告側、被告側が情報交換するプロセスのことです。

これを伝えるとあなたが言いたいだろうことがわかります。ウェブデザイナーやデベロッパーは自分のフィーが弁護士級に上がることを期待してこの表現を使い始めるだろうと思います。法的なディスカバリーと大規模開発プロジェクトで起こるだろう事の間には命題のようなものがあると思いますが(例:全員が同じ方向を向いているかどうか情報交換すること)、私たちがいる開発のフィールドは公正な戦いをするフィールド(裁判)で使用する言い回しを借りているということを知っておくのは価値のあることだと思います。クライアントのプロジェクトとを考える際に、私は必ずしもそういう方法は取りたくないなと思います。

またディスカバリーという言葉の起源は単純に情報交換をするという意味にもなりますが、何かを作り出すという意味でもありません。ディスカバリーは何かを見つけ出すことであり、それにより物事の方向性を導きやすくなります。つまりインプットであり、アウトプットではありません。

誤解しないでいただきたいのは、ディスカバリーサービスそのものは価値があり、多くのプロジェクトで必要なものであることに変わりありません。実施する内容が大きいほど価値あるものになります。ディスカバリーには以下が含まれます。

  • 既存のドキュメントを共有しレビューすること(例:スタイルガイド、ペルソナ、ウィキ、アナリティクス)
  • 要求を集めること
  • 技術インフラのレビューと分析
  • ステークホルダーの役割、責任のレビュー
  • プロジェクトレポジトリとアセットのレビュー、分析
  • 既存コンテンツ、アセット、リソース、デザインパターンなどの監査

これら全てはベンダーに対してファシリテートしてほしい最も重要な項目ですが、もし上記がベンダーが約束したことのすべてなら、関係者は神経質になるばかりか逆に失望しているかもしれません。

なぜベンダーはディスカバリーフェーズを提案するのか、何が足りないのか

ディスカバリーの提案書を受け取るとよくあるのが、最初のフェーズでは金額が明記されていて、その後のプロジェクトについては明記されていないケースです。私はこれまで提案書を各手伝いをたくさんしてきたので、なぜこうなるのかがわかります。ディスカバリーフェーズの成果物(提出物)の一つはプロジェクト全体のコストをより明確にしたプロジェクト計画であることがよくあります。ディスカバリーの前には、業界でいうところのSWAG(専門家による経験に基づいた概算見積もり)または球場を立てるほど莫大な概算見積もりが提供されます。

これは大規模開発プロジェクトの典型例です。このような提案を受け取ったことがあればがっかりするかもしれませんが、提案書にプロジェクト全体の正確な予算が書かれないことには驚かないと思います。あなたが選んだベンダーは、予算内で成功に収める成果物を提供する信頼に足りる会社であることに自信を持つことの方が重要です。皮肉にも、少なくとも弊社では、提案書を作る際に求めているのは予算内で企業様を成功に導くことに自信が持てるかどうかです。しかし、お互いにお仕事をご一緒したことがなければ、信頼関係に基づいてお互いを信じてみることが必要です。

多くのシステム開発企業では、ディスカバリーフェーズをなるべく安く、簡単にすることで、提案によって生じるクライアントとの軋轢を解決しようとします。中には、プロジェクトの規模が大きく売りげが多く見込める場合は、ディスカバリーを無償で行う企業もあります。もしあなたがこのような提案書をもらい、コスト的にメリットがあると判断する一方で、ディスカバリーがプロジェクトチームにとって価値あるものにならなかった場合、そこに投資するのをためらうでしょう。これまでプロジェクトをご一緒した多くの企業様は私たちと同じようにとても忙しい人々です。あなたが大規模サイトを再構築してくれるベンダーを見つけた場合、あなたのチームメンバーにはディスカバリーに多くの時間をかけて欲しくないと思うでしょう。プロジェクトの第1日目から、成功するために信頼できるパートナーを見つけたいはずです。

ではどうすればいいでしょうか?正確な見積もりがないことが問題ではなく、もしディスカバリーを短期間で安いものにしてクライアントの課題や要望を見失ったら、どういう方向にクライアントを導くべきなのでしょうか?

ディスカバリーを超えてデザインに入り込む

数年前、私はあるお客様と第1フェーズについて契約をしようとしていました。要望は社内のイントラネットを改善したいとのことでした。その会社は急成長中で、才能あるスタッフを魅了し続ける必要がありました。既存のイントラネットは新規に入社した社員にとってはひどく扱いにくいものでした。世界を代表するテクノロジー企業のイントラネットというよりは歴史的遺物のような感じでした。クライアントから求めているものと違うと言われながら提案書のやりとりを繰り返していると、この質問をするのがいいのではないかという素晴らしいアイデアが浮かびました。「第1フェーズが終わるまでに社内の関係者に自信を持たせ、活き活きしてもたうためにしなければならないことは何ですか?」

その後企業様が、組織として解決すべき問題が何なのかを理解する必要性を認識したので、私たちに調査業務を依頼されました。しかし私たちがそもそも提案したのはその調査業務(ディスカバリー)だったのです。その企業様にとって価値があるのは問題をより明確に認識することだけでなく、解決するために必要なビジョンも見つけることです。その認識で物事を再構築することが必要だったのです。こういったやりとりで先方のチームは活き活きとなるだろうし、私は決裁者となるCEOや関係者の方々にお見せする明確な成果物も定義できたかもしれません。提出物がプロジェクトの価値、つまり予算の策定にも繋がるかもしれません。当時、クライアントのために何をデザインし、開発するのかはっきり決まってなかったので、全体プロジェクトに対し正確な予算を見積もる自信がありませんでした。またクライアントも自分たちが欲しいものが決まっていなかったので、価値に基づいた予算を策定する方法がありませんでした。

これは後になって明らかになりました。デザイナーとして調査初期段階で出てくる素晴らしいインサイトや状況を一変するアイデアを知ることや忘れることは簡単で、それはすべて素晴らしく正しいことですが、問題を解決し、人々を興奮させるのは実際のデザインです。デザイナーとして、これらのインサイトに興奮します。なぜならそれらがクライアントが称賛するデザインを作り出すために素晴らしい発見をする瞬間だからです。クライアントはそういうデザインを求めているものだと思っています。

先ほど説明した状況における良いニュースは、クライアントは全てのプロセスを第1フェーズで行う必要がある、と言っていたわけではない点です。調査やディスカバリーに価値を見出さないとも言っていませんでした。認識していたのは、このプロジェクトは我々が考えているよりも大規模なもので、何かを始めることなくして見積もることができないものだったということです。

私たちが行ったことは、クライアントが見たいと思っていたものを作った時点で第1フェーズを終了したこと、つまりイントラネットのデザインがどうあるべきかということを見せたことです。
私たちは、調査やだけだった第1フェーズから、主要なワイヤフレームと初期ビジュアルデザインのアイデアを作成したワークショップを含む第1フェーズに変更しました。初期の調査やワークショップは、どのページタイプが成功するために最も重要なのかを定義するのに役立ちました。(例:ログイン時の従業員ダッシュボードやよく使われるコンテンツタイプやツールなど)第1フェーズは1-2週間単位で大きくなっていきましたが、クライアントにとって価値あるものを色々と作ることができました。

このプロジェクトに関わって以来、新規クライアント様にはデザインのエンゲージメントにおいてこのプロセスを採用しています。プロジェクトが第1フェーズを保証する際は、私たちの提案プロセスはクライアントにとってすごく価値のある基本的なことを構築するためのものとして提案します(通常はクライアントとコラボレーションして)。常に同じことをしているわけではないですが、多くの第1フェーズでは以下を行っています。

  • ディスカバリーワークショップ
  • 軽い調査(社内外のユーザー調査、市場調査など)
  • モデル、ダイアグラム、ワイヤーフレーム、ズームモック形式でプランを作成するためのデザインワークショップ

 

デザインワークショップ:早急に価値を作る

素晴らしい結果を得るためには、2つのことが必要です。:計画と、あまり時間が十分でない状態(Leonard Bernstein)

私たちは第1フェーズをなるべく簡潔に終わるようにしていますが、最終的には一緒に作成する予定の初期設計を作成するところまで行うよにしています。意図的に簡潔にしている第1フェーズで実際のデザインワークを導入しているメリットは時間の制限があることによってよりデザインがクリアになることです。サイトのユーザーやビジネスにとって最も重要なことをチームに迅速に反映させることができます。

初期の調査やディスカバリーワークショップはチームにとても価値のある示唆を与えると同時に、疑問も出てきます。決断力のなさはデザインプロジェクトの進行を妨げます。それぞれの分野で考えや疑問を持ったチームメンバーがプロジェクトに関わっているのです。ユーザー調査やテスティングは結論を導くのに有効ですが、それらを利用してもプロダクトやインターフェースについて複数の方向性が導き出されてしまいます。そのため、結論を導き出すことは難しいです。もしあなたがプロのデザインチームを雇った場合、すぐに答えを出してくれることを期待すると思いますが、必ずしもそうなるとは限りません。成功するプロジェクトのポイントは、クライアントと一緒に、早期に基礎となる決定事項をしてしまうことにあります。私たちはこれをデザインワークショップを通じて行うようにしています。

デザインワークショップのコンセプトは私たちが発明したものではありません。弊社チームが長年やっているやり方で、他の会社などから学びながら長年にわたって変更を加えています。Kevin Hoffmanさんはこの辺りのノウハウを長年提供してくれていますし、GameStormingという本も非常に役立ちます。最近出たGoogle Ventures'の本「Sprint」では、私たちがやってきたことをよりスタートアップ向けに解説しています。

本来デザインワークショップは、デザイン設計に関する共同作業のために、さまざまな役割と見解をを1か所でまとめて取り組むことです。弊社はスタッフの住んでいるところがバラバラなので、デザインワークショップは実際に関係者にお会いして行います。クライアント様の所在地に弊社スタッフがお伺いし、ワークショップで数日ご一緒します。当日までの間にクライアントと一緒にアジェンダ作成し、スケジュール調整も行います。毎日がワークショップセッションに分かれています。それぞれのセッションはとても簡潔で(30分から1時間)、関係者のみなさんが全てのワークショプに参加しないといけない状況を避けます(他社のケースだとクライアント様側のチームでは不可能なことが多いと思いますが)。プロジェクトのニーズは同じではありませんが、私たちがワークショップで重視している共通事項には以下を含みます。

  • クライアントとユーザーが実感している課題で解決するべきポイント
  • 問題を構造化し優先順位をつけ、どう計測するか
  • プロジェクトやプロダクトの制約:政治的、技術的、スタッフ、リソース、アセット、ブランドなど
  • 製品やブランドの競合状況について
  • オーディエンスとセグメンテーション、シナリオ、ニーズ、優先度について
  • コンテンツ、モデル、優先度、編集プロセスとガバナンス
  • サイトとインフォメーションアーキテクト、インターフェース、パターン、ページタイプ、レイアウトと優先度
  • ブランドとその特徴、ビジュアルスタイル、バリュー、個性
  • フェーズ、成果物、成果物、ケイデンス、コミュニケーションに関するプロジェクトプロセスとチームのニーズと価値
  • 問題を解決して目標を達成するための可能なレイアウトとインターフェイスのアプローチ

私たちが行うワークショップはこれらの話題に関する議論だけではありません。洞察を引き出し決断を導くための方法論をたくさん利用し議論を進めます。一般的な方法論という意味ではこういうアプローチをしています。

  • カードソート
  • ステッカー投票
  • メタファーゲーム
  • デザインスタジオスケッチエクササイズ
  • ガットチェック

Tom WujecさんのTED Talkで、彼の多くのお客さんに乾杯するときの絵を描いてもらったときの話を紹介していました。話に出して5分後にグループが一緒になってこの乾杯の件をしてもらった時に発見したことを紹介し、興味深いことを言いました。「静かにした状態で乾杯をするようにしてもらうと、より上手により素早く行ったのです!」

クライアントのチームから5-10人に参加してもらい、何時間もプロジェクトの課題やゴールを議論し、明確な結論に至っていないということに驚かないわけにはいかないです。しかし「ディスカバリー」に制限を設け、時間制限を与え、個人でもコラボでもタスクをしてもらい、体を使って重要性や潜在的なインパクト、要求される努力のレベルなどを表現してもらうと、1時間以内に決断に至るように導くことができるのです。口頭や精神的な部分に頼っていたものを肉体的な視覚化したものに頼ることはとても良い結果をもたらします。

同じく、既存サイトで好きではない部分や新サイトに期待したい部分を明確に言葉にすることは非常に難しいことです。その代わり、ビジュアルのメタファーを使い、なぜサインアッププロセスがマリオットでの体験ではなくWホテルの体験のように感じるべきか、なぜNPOのブランドはメルセデスというよりはボルボっぽいのか、などを共に考えることは、プロジェクトチームが一緒に作るべきものを定義するために、より描写しやすくします。

これらのワークショップで起こる意思決定は、しばしばクライアントが大変驚くものになりますが、それはすべてをまとめたスケッチワークショップから来る視覚的なアイデアです。ワークショップの終わりまでに、キーとなるページや要素のワイヤーフレームを描き、クライアントもそのスケッチを書くのを手伝います。これまで働いたクライアントの多くは、サイトの問題をどう解決するかについてアイデアを持っていて、スケッチを一緒に行うことはそういうアイデアを惹きつけるのに役立ちます。
 

一般的に、ワークショップを行って1週間以内に、クライアントと一緒に行った全ての決定事項を反映した第2バージョンを作成します。それらにはゴール、メトリクス、サイトマップ、フェーズダイアグラム、インフォメーションアーキテクトやコンテンツモデル、ワイヤーフレーム、Zoom Mockなどを含みます。その後実際のユーザーにテストできる状態のサイトを作り、成功に導く最終系までテストを繰り返します。さらに、これらの状況報告は、プロジェクトのあとで入ってきた新しいプロジェクトチームやローンチ後の製品チームをかなり楽にします。

いかがでしたか?

私たちは常に学び、改善し、より良いデザインエンゲージメントの方法を探しています。そのことによりクライアントに素晴らしい価値を提供し、成功に導くことができます。第1フェーズを情報交換、ディスカバリーの場からテストできる状態のデザインを仕上げる場にすることでクライアントにとっても弊社にとっても良いことがあるとわかりました。これを読んだあなたからもご意見を聞きたいです。御社のプロジェクトでデザイン・開発チームを雇った場合、何がうまくいって次に何を改善したいのかお聞かせください。

 
フッターの採用情報
 
Kentaro Inoueの写真

この記事を書いた人: Kentaro Inoue

ANNAI株式会社
マーケティングマネージャー
サービスの設計・企画、マーケティング、採用戦略の立案などを担当。普段は新潟で猫と一緒に、時々海外からリモートで働いています。好きなモジュールはRulesとFlagです。

関連コンテンツ