ANNAIマガジン
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この記事は「 WHY SHOULD COMPANIES SUPPORT DRUPAL? 」の翻訳です。
この記事の目次

なぜ企業はDrupalをサポートすべきなのか?

私は過去10年に渡ってオープンソースソフトウエア(主にDrupal)に関わってきました。Drupalはこれまで申し分ないぐらいの規模で普及が進んできました。今回は私なりの苦労話を共有しますが、商談の際、幹部に質問する内容が「なぜDrupal導入を検討しなければならないのか」から「なぜ非公開のコードを持ち、ライセンスフィーのみで7桁(日本円でいう億円単位)もするプロプラ製品を検討しなければならないのか」に変わってきています。

組織内のウェブ戦略にオープンソースベースのテクノロジーを採用するグローバルブランドや優良企業は、導入に際しDrupalのようなコンテンツマネジメントフレームワークは、市場シェアが拡大し勢いも出てきているという考察によって社内を説得しています。下にご紹介しているのは色々な業界でDrupalを採用している企業一覧です。

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簡潔にいうと、上の企業は一定の領域においてデジタル・ウェブ戦略をDrupalに任せている印象的な企業とも言えます。しかし、なぜDrupalのようなオープンソースをサポートするのが重要なのかについては、採用する人々の間で混乱が生じ続けています。原則的にDrupalプロジェクトをサポートし貢献する組織は開発などの専門サービスを提供する企業です。この事実を裏付ける数値があります。

2016年に行ったDrupalファウンダー Driesによる調査によると、Drupalの進化に貢献している企業の大部分は開発会社です。

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その内訳は以下の通りです。

  • Drupal開発会社:82%
  • インフラ系の会社:13%
  • エンドユーザー:4%
  • デジタルマーケティング会社:1%
  • システムインテグレータ:0.4%


さらに注目すべきは、Drupalcon Baltimore(Drupalのカンファレンス)のスポンサーだった100企業のうち、クライアント(エンドユーザー)は1社もありませんでした(これは、アクセンチュアとE&Yスポンサーの代理店またはプロフェッショナルサービス側を前提としています)。その他興味深いのは、大学などの高等教育機関もスポンサーしていない点です。大学関係者は参加者の中でも高い割合を占めますが、スポンサーになることに関しては高い壁があるようです。

多くの組織にとって、デジタル戦略でトップクラスになることは組織の戦略ビジョンの一部になっています。このことはデータで裏付けることができます。昨年、IDCが世界の2000企業に対して調査を行いました。その中で、2017年までに世界のCEOの3分の2はデジタルトランスフォーメーションを第1優先事項にあげるだろうと述べています。

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もしこれが事実ならば、Drupalが企業のビジョン達成のために役立っているにもかかわらず、なぜ彼らがDrupalに深く関わることをためらうのでしょうか?おそらく主な理由は「認知が足りない」ということだと思います。Drupalのようなオープンソースプロジェクトにスポンサーする場合、企業が収益にもたらすメリットと価値の相関関係について十分なノウハウ(データ)はありません。現状解決すべき課題は、Drupalがいかに企業や組織のビジョン達成に最適か、ということを教育することです。

これからご紹介することは、企業・組織がDrupalに貢献することによってもたらされる巨大なメリットです。

  1. 目的:人は自分の仕事を知ることで満足を得ます。コードは企業のミッションをサポートするのに役立ちます。特にそのミッションが自社のミッションと同類のものであればなおさらです。
     
  2. インハウス開発スタッフの採用につながる:Drupalやオープンソースソフトウエアのトップエンジニアは貢献やシェアすることに価値を感じている人たちと共に働きたいと思っています。
     
  3. 自社スタッフに対する無償トレーニングとして:他の開発者はコードレビューやQA、バグ発見のために使用中のモジュールテストなどを行います。
     
  4. コミュニティ内のブランドエクイティ:drupal.orgに出ているケーススタディなどが新規トラフィックを生み、コンバージョンを生み、売上につながります。
     
  5. 技術力の認知:Drupalを採用する企業の多くは、必要不可欠なモジュールや主要機能などに依存しています(メディア企業はDrupalの最新バージョンに移植されるビデオ関連モジュールを必要とするかもしれませんが)。自社のチームにDrupal利用させることで、より多くのコミュニティが御社に気づき、その活動に感謝してくれるでしょう。

次に、決して私は多くの企業がDrupalをサポートしていないことを指摘したいと思います。確かにDrupalが普及することにより雇用が生まれ、あらゆる面でこのエコシステムの助けになります。2016 年に行ったあるプレゼンテーションで、ファイザー製薬のMike Lambさんとお話しする機会がありました。Drupalcon Dublinで彼が説明した自社組織(チーム)のモデルはとても素晴らしいものでした。Time Incのような企業はDrupalの基盤をサポートするために寄付をしています。NBCはニューヨークでDecoupled Developer DaysのようなDrupal meetup、カンファレンスの会場提供をしています。

このような動きはDrupal業界の中だけで起こっているわけではありません。企業はコードスプリント、ハッカソンなどのクラウドソーシングに大きな価値を見出だし始めています。ユナイテッド航空は報奨金プログラムを運営し、管理された環境下でセキュリティホールやバグを特定してくれる「フレンドリーハッカー」に何百マイルものボーナスを提供しています。

最後に、Drupal導入組織からより多くのサポートを得ることは、今以上にコミュニティを拡大し続けるためには不可欠です。私の意見ですが、エンドユーザーをエンゲージすることはDrupal Associationにおいて高い優先度で対応するべきことです。組織の幹部にとってGive back(お世話になった文を別の形でお返しする)の文化を浸透させるのは重大な機会です。方法としては自社が導入事例になることもそうですし(例:ナレッジ共有)、イベントスポンサーもそうですし、提供モジュールにパッチを当てることもそうですし、社内開発チームにDrupalの開発時間を許可することもそうかもしれません。

 
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この記事を書いた人: Kentaro Inoue

ANNAI株式会社
マーケティングマネージャー
サービスの設計・企画、マーケティング、採用戦略の立案などを担当。普段は新潟で猫と一緒に、時々海外からリモートで働いています。好きなモジュールはRulesとFlagです。

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