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この記事は「 4 Common Surprises Experienced During Design Discoveries 」の翻訳です。
この記事の目次

 

はじめに

次のCMSの大幅なデザイン改善プロジェクトが始まります。あなたのタスクはベンダーを探す仕事。概算見積もりなどをもらうところから各社からの提案が始まります。しかしその中の1社が「正確な見積もりは最初の課題発見ワークショップをご一緒しない限り出せません」という提案をしてきました。あなたはこの提案を少し億劫に受け取るかもしれません。なぜなら、あなたがしたいことはベンダーがいくら請求してるのかを知り、御社の予算に合わない会社を候補から削除していくことだからです。課題発見ワークショップというのは、だいたい行うことにためらいがあるものです。しかし実施した企業の多くは、学んだことに驚き、新しく発見した課題をプロジェクト全体に適用していくことが必要と感じるだけでなく、これがプロジェクトの成功にもつながるということを実感します。

課題発見ワークショップって、実際何ですか?

まず課題発見というのは、クライアント様がすでに特定している課題をただ集める作業ではありません。むしろそれ以上のことです。課題発見では全てのステークホルダーに面談することが必要で、その後ワークショップを行い、チームのワークフロー、プロセス、痛点、内部・外部のユーザーがサイトをどう感じているのかを客観的に評価するためです。この調査とワークショップフェーズは、プロジェクトのゴールを深く理解するために活用されますし、多くの場合、お客様とステークホルダーが最終的に達成したいゴールに沿うために、設定したゴールに改めて集中するためにも活用されています。

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これらの要素は、正確なプロジェクトにかかるコストがわかることに加え、御社にとって最適なデザインソリューションが何なのかを決定するための基礎となります。結局、あなたが予想していたよりはるかに高い金額がかかる、ということがプロジェクト途中でわかるだけなのは全く楽しくないものです。言うまでもなく、納期が遅れることも同じく楽しくないことです。これらのことは、課題発見プロジェクトを通じて回避することができるのです。

課題発見プロジェクトは思いがけないことを発見する

私たちはこれまでたくさんのクライアント様に課題発見プロジェクトを行ってきましたが、色々な現場で様々なシナリオや状況を目撃してきました。それでもなお、課題発見の重要性を確認してきたこれまでの年月で、何度も共通する驚きを得てきました。今からご紹介することがプロジェクトの開始時に認識できていないと、課題発見のプロセスは長い時間がかかっていたし、関係する全ての人々にとって頭の痛いことになるだろう、と言うことです。

1: 必ずしも全員が同じ考えでいるわけでなはい

課題発見ワークショップでもっとも大事な成果は、解決されるべき問題や解決のために必要な戦略について、必ずしも全てのステークホルダーが同じ考えをしているわけではない、と言うことを知ることです。ユーザー体験をデザインする多くの企業がサイトのユーザーやお客様のことをターゲットにするというゴールを持っていますが、毎日サイトに触れている社内ユーザーのことを忘れがちです。常に社内のステークホルダーが意思決定、メンテナンス、CMSを使って編集に関わっているのです。

弊社の課題発見プロセスの一部として、全てのステークホルダーに個別面談をするだけでなく、共通した課題認識への理解を測るため、数々のことを体験します。ほとんどの企業で経営幹部やマネジメント層によって意思決定されますが、現場で働いている人々にはいつも発言権があるわけではありません。面談やグループワークを通じて、このように繋がっていない部分 (コミュニケーションの断絶、ワークフローの問題、そのほかたくさんの問題) が明確になり、多くの場合、企業にとってそれらは驚くべき発見になります。関係者の方々は、過去に考えていなかったような課題に直面し、戦略を変更したり、より良いワークフローを構築しようとしたり、関係者全員が関係を改善しようと努力したりします。

「組織として策定した2つの戦略イニシアチブは社内の誰からも票を得ませんでした。それらの戦略は、明らかにサイトの成功に対してチームメンバーが思っていたものとは異なりました」プロジェクトスポンサーの声より

2: 前もって決まったプロジェクトプランは必ずしもプロジェクトの全てを捉えていない

企業の決定権者は、ベンダーを選定する前にどういったものが欲しくて、それをどのように実現したいか、ということについてはっきりとした意見を持っています。彼らはベンダーに訪問してもらい、彼らの計画や戦略を実装することを求めています。弊社の経験では、成功するベンダーは常に、ベンダーや関係者に共有してもらった計画をきっちり理解するためにだったり、何より(人々、ワークフロー、プロセス、ゴール、戦略)などの全てを深く理解するために、調査したりワークショップを開催しています。

課題発見フェーズでは、ユーザーインタビューやユーザーテストはプロジェクトの方向性についての誤解を明らかにすることに役立ちます。企業はビジネス戦略に合ったCMSを使ってゴールを達成する為に、このようなプロジェクトを立ち上げ調査します。ゴールを達成する為に、物事を反対方向から見る為にプランが変更になったり、ターゲットユーザーが求めていることを知る為に深く洞察することをやめたりします。弊社は、デモグラフィックな視点と消費者の気分を対比してデザインを考えようと試みる企業を目撃してきました。デモグラフィックとユーザーの気分はユーザーがサイトに惹きつけられる目的としては共通のものなのに、です。

例えば、弊社が公共サービスのオンラインディレクトリを提供するクライアント様とのプロジェクトに参加した時、ユーザーの気分に基づいて感じるニーズや価値を知ることは、年齢や性別に関係なく普遍のものを探すことに役立つと言うことがわかりました。(例えば、緊急事態に陥っているユーザーはガス漏れ修理サービスを探している vs 説明を求めているモードに入っているユーザーはキッチン改修のアイデアを調べている、など)こう言うアプローチをすることは、安定して素晴らしい体験を提供するプロダクトを作ることを可能にします。

3: 何年もかけて作られた価値あるコンテンツはアーカイブの中に埋もれる

企業が長年かけて作ってきたコンテンツ量によっては、全てを記録しておくのは難しい時があります。さらに言うと、編集チームの(コンテンツ投稿の)回転率などを考え得ると、記録すること自体が相当難しいことだともわかります。企業の多くはサイトを一つだけ持っているわけではなく、数サイトあったりマイクロサイトを持っているからです。

課題発見ワークショップは、まだ時代にあっていて、企業のコンテンツ戦略に再利用できそうな価値あるコンテンツを再発見してくれます。企業の多くは「まだ再利用できたり再構築する価値のある、時代にあったコンテンツ」という金脈の上に座っていることが多い、ということを知ります。そういうコンテンツが存在するということを知らないことは、必要ないコンテンツを再度作る為に投資することにもなったりします。

4: 課題発見ワークショップは思ったよりもはるかに効率的である

課題発見ワークショップに関することや、ワークショップを通じて得られることに誤解があるので、お付き合いしたクライアント様はワークショップによっていかに洞察力が深くなり、効率的になるのかということに驚かれるケースが多いです。注意しなければならないのは、ワークショップは実際に会って行うことが必要で、リモートで行うものではないということです。現地にいることで、社内のステークホルダーとの面談をすぐに行うことができ、クライアント様のダイナミクス、プロセス、問題、ニーズ、全体像などをより深く理解することができます。

課題発見が完了すると、必要な情報を全て得ることができ、多くのケースで、ワークショップの時から行っているワイヤーフレーム作りが始まります。現場で効率的かつ効果的にこのフェーズを完了することは、プロジェクトが非常に多くのレベルで成功するように設定することを意味し、デューデリジェンスが完了してからプロセス全体をスピードアップすることでもあります。

結論

当初私の担当クライアントは課題発見を行うことに対し消極的でしたが、行なった後にはワークショップに感謝し、ワークショップが提供する価値を理解されます。もともとプロジェクトに期待していた効果以上のものが得られる、として驚かれるケースがよくあります。中には課題発見ワークショップで得た知見を実際のプロジェクトに導入されることもあります。最も大切なのは、課題発見ワークショップは社内外のユーザーに素晴らしい体験を想像するための正しい道筋を作ってくれるものであり、必要ない追加コストや納期遅れなどに悩むことを避けるためのものです。

終わりに

いかがでしたか?個人的には納得することの多い翻訳記事となりました。今回ご紹介した話は、クライアント/ベンダーという関係性ではなくても起こり得ることなのかもしれません。車内で新しいプロジェクトが始まったが、当初想像していたものとは違う方向性に進み出した、などの経験は皆さんもあるのではないでしょうか?

そういう時こそ第3者主導のワークショップで客観的でバイアスのかかっていない意見や洞察を加えて物事をシャープにすることが必要だと思います。ワークショップそのものは骨の折れる作業ですが、それを行うこと自体に価値がある、ということは結構あるのではないでしょうか?ぜひ参考にしてみてください。
 

 
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この記事を書いた人: Kentaro Inoue

ANNAI株式会社
マーケティングマネージャー
サービスの設計・企画、マーケティング、採用戦略の立案などを担当。普段は新潟で猫と一緒に、時々海外からリモートで働いています。好きなモジュールはRulesとFlagです。

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