ANNAIマガジン
Drupalの使い方ガイド - インストールから実践活用まで
この記事の目次

この記事では、オープンソースCMSのDrupalについて、基本的な知識からインストール方法、実践的な使い方まで幅広く解説します。Composerを使った最新のセットアップ手順や、管理者向けの便利なTipsも網羅しているので、初心者からプロフェッショナルまで役立つ情報が満載です。

1. Drupalとは - 基本知識と特徴

Drupal(ドルーパル)は、高機能なオープンソースのコンテンツ管理システム(CMS)です。単なるCMSとしてだけでなく、Webフレームワークとしての側面も持ち合わせており、柔軟性の高いWebサイト構築が可能です。2025年現在、最新バージョンはDrupal 11となっています。

Drupalの主な特徴

Drupalの最大の特徴は、CMSとしての使いやすさとWebフレームワークとしての拡張性を兼ね備えている点です。基本的なコンテンツ管理機能に加え、複雑なサイト構造やカスタム機能の開発も柔軟に対応できます。

NASAや日本の省庁など、高度なセキュリティが求められる公的機関でも採用されており、堅牢性と信頼性の高さが証明されています。企業サイトやECサイト、メディアサイトなど、様々な用途で活用されています。

2. DrupalとWordPressの違い

DrupalとWordPressは共にポピュラーなCMSですが、それぞれ異なる強みと特性を持っています。

項目DrupalWordPress
ターゲット中〜大規模サイト、複雑な構造のサイトブログ、小〜中規模サイト
学習曲線比較的急(習得に時間が必要)緩やか(初心者でも導入しやすい)
カスタマイズ性非常に高い(コンテンツ構造、機能など)テーマやプラグインにある程度依存
セキュリティ非常に堅牢(企業・政府サイトにも適用)プラグイン依存で変動
拡張性モジュールによる高度な拡張豊富なプラグイン

Drupalは複雑なデータ構造を必要とするサイトや、高いセキュリティが求められるプロジェクトに適しています。一方、WordPressはシンプルなブログやシンプルなWebサイトを迅速に立ち上げたい場合に最適です。

3. Drupalを選ぶメリット

SEO対策に有効

Drupalには、SEO対策に役立つ機能が標準で搭載されています。クリーンなURLの自動生成、メタデータの管理、XMLサイトマップの生成などが容易に設定可能です。また、高速化のためのキャッシング機能も充実しており、ページ読み込み速度の向上に貢献します。

拡張モジュールが充実

Drupalには数千の拡張モジュールが公開されており、様々な機能を追加することができます。例えば、Views(データ表示)、Pathauto(URL自動生成)、Admin Toolbar(管理画面拡張)などの人気モジュールを活用することで、開発効率を大幅に向上させることが可能です。

多言語サイトの構築が容易

Drupalは多言語サイトの構築に強みを持っています。コアに多言語機能が統合されており、コンテンツ、メニュー、設定など、サイト全体を複数言語で管理できます。これにより、グローバルなビジネス展開を目指す企業にとって理想的な選択肢となっています。

セキュリティ対策が万全

Drupalはセキュリティに定評があり、専門のセキュリティチームが常に脆弱性をチェックし、迅速に対応しています。定期的なセキュリティアップデートや、厳格なコードレビュープロセスにより、安心してサイトを運用することができます。

高度なパフォーマンス最適化

Drupalには高度なキャッシング機能やデータベース最適化オプションが搭載されており、高いパフォーマンスを実現できます。大規模サイトや高トラフィックサイトでも安定した動作が可能です。

5. Drupalのインストール手順

2024年6月、Drupalコミュニティは公式にDDEVをローカル開発環境として推奨することを決定しました。DDEVはDockerベースのオープンソースツールで、数分でローカルWeb開発環境を構築できます。

5.1. DDEVのインストール

DDEVを使ってDrupalを設定するには、以下の手順を実行します:

  1. 必要条件の確認DDEVのシステム要件を確認します
  2. Dockerのインストール:お使いの環境に合わせてDockerをインストールします
  3. DDEVのインストール:お使いの環境に合わせてDDEVをインストールします

5.2. Drupalのインストール

Drupalは、ComposerまたはGitクローンを使用してインストールできます。後者はDrupalコアへの貢献に適しています。

オプション1:Composerを使用する方法

mkdir my-drupal-site && cd my-drupal-site
ddev config --project-type=drupal11 --docroot=web
ddev start
ddev composer create drupal/recommended-project:^11
ddev composer require drush/drush
ddev drush site:install --account-name=admin --account-pass=admin -y
ddev launch
# もしくは以下で自動ログイン
ddev launch $(ddev drush uli)
  1. DDEVのDrupalクイックスタートの指示に従ってください。
  2. これで最新の公式リリースのDrupalがインストールされ、デフォルトブラウザで開かれます。
  3. Drupalの操作に便利なコマンドラインツールであるDrushもインストールされています。

オプション2:Gitの`clone`を使用する方法

# 開発版を取得
git clone https://git.drupalcode.org/project/drupal.git

# Drupalディレクトリに移動
cd drupal

# DDEVプロジェクトを作成
ddev config --project-type drupal

# プロジェクトを開始
ddev start

# Drupalコアの外部依存関係を取得
ddev composer install

# Drushをインストール
ddev composer require drush/drush

# Drushを使用してDrupalをインストール
ddev drush site:install -y

# デフォルトブラウザの新しいタブで新しいDrupalサイトを起動
ddev launch

# または管理者アカウントに自動的にログイン
ddev launch $(ddev drush uli)

これでDrupalの最新開発版(`11.x-dev`)がインストールされ、デフォルトブラウザで開かれます。Drupalのパッチやマージリクエストをテストできるようになりました。

6. 基本的な使い方ガイド

6.1. 管理画面の基本操作

Drupalの管理画面は、サイト上部にあるツールバーからアクセスできます。主な管理セクションは以下の通りです:

  • コンテンツ:記事や基本ページなどのコンテンツを管理
  • サイト構築:ブロック、メニュー、分類、ビューなどのサイト構造を管理
  • テーマ:テーマ設定やカスタマイズ
  • 機能拡張:モジュールのインストール・設定
  • 設定:サイト全体の各種設定
  • ユーザー:ユーザーとアクセス権の管理
  • レポート:システムの状態やログを確認

6.2. コンテンツの作成と管理

コンテンツを作成するには、以下の手順で行います:

  1. 管理画面の「コンテンツ」をクリックし、「追加」ボタンをクリックします。
  2. コンテンツタイプ(記事、基本ページなど)を選択します。
  3. タイトルと本文を入力し、必要に応じてメタデータやタグを設定します。
  4. 「プレビュー」で確認し、問題がなければ「保存」をクリックします。

コンテンツタイプごとの違いを理解することが重要です:

  • 記事(Article):ブログ投稿やニュース記事などの時系列コンテンツ
  • 基本ページ(Basic Page):会社概要や利用規約など、静的なコンテンツ

6.3. ユーザー管理とロール設定

Drupalではユーザーごとに異なる権限を持つロールを割り当てることができます:

  1. 「ユーザー」→「ロール」で新しいロールを作成します。
  2. 「権限」タブでロールごとの権限を設定します。
  3. 「ユーザー」→「追加」で新しいユーザーを作成します。
  4. ユーザーに適切なロールを割り当てます。

代表的なロールとして、以下のような設定が一般的です:

  • 管理者:全ての操作権限を持つ
  • 編集者:コンテンツの作成・編集・公開権限を持つ
  • 投稿者:コンテンツの作成・編集のみ可能(公開権限なし)
  • 認証済みユーザー:コメントやプロフィール閲覧など限定的な権限

6.4. メニューとナビゲーションの設定

サイトのナビゲーションを構築するには:

  1. 「サイト構築」→「メニュー」で既存のメニューを編集するか、新しいメニューを作成します。
  2. 「リンクを追加」をクリックし、タイトルとパスを入力します。
  3. 必要に応じてメニュー項目をドラッグ&ドロップで並べ替えます。
  4. 「保存」をクリックして変更を適用します。

メニューをブロックとして表示するには、「サイト構築」→「ブロックレイアウト」で設定します。

7. 実践的な活用法とTips

7.1. Composerを使ったモジュールのインストール

Composerを使用してモジュールをインストールする方法は、以下の通りです:

composer require drupal/モジュール名

例えば、Admin Toolbarモジュールをインストールする場合:

composer require drupal/admin_toolbar

モジュールをインストールした後、管理画面の「機能拡張」セクションで有効化する必要があります。

7.2. テーマのカスタマイズ

Drupalのテーマをカスタマイズするには、以下の方法があります:

  1. サブテーマの作成:既存のテーマを基にサブテーマを作成し、CSSやテンプレートをカスタマイズ
  2. テーマ設定の活用:「テーマ」→「設定」でカラーやロゴなどの基本設定を変更
  3. Twig テンプレートの編集:テーマディレクトリ内のテンプレートファイルを編集してマークアップをカスタマイズ

7.3. コンテンツタイプとフィールドの設定

独自のコンテンツタイプを作成するには:

  1. 「サイト構築」→「コンテンツタイプ」→「追加」をクリックします。
  2. コンテンツタイプの名前と説明を入力します。
  3. 「フィールドを管理」タブで、必要なフィールドを追加します。
  4. 「フォーム表示」タブで、入力フォームのレイアウトを調整します。
  5. 「表示設定」タブで、フロントエンドでの表示方法を設定します。

さまざまなフィールドタイプ(テキスト、画像、参照、日付など)を組み合わせることで、複雑なコンテンツ構造を実現できます。

7.4. Viewsを使ったコンテンツリストの作成

Viewsモジュール(Drupalコアに含まれる)を使用すると、カスタムリストやブロックを作成できます:

  1. 「サイト構築」→「ビュー」→「追加」をクリックします。
  2. 表示するコンテンツタイプやフィルター条件を設定します。
  3. 表示形式(テーブル、リスト、グリッドなど)を選択します。
  4. フィールドやソート順を設定します。
  5. 表示方法(ページ、ブロック、RSS、REST exportなど)を設定します。

Viewsを使うことで、プログラミングなしで複雑なコンテンツ一覧を作成できます。

8. おすすめモジュールと拡張機能

Drupalサイトの機能を拡張するための、特におすすめのモジュールを紹介します:

8.1. 管理効率化のためのモジュール

  • Admin Toolbar:管理メニューをドロップダウン式に拡張し、操作性を向上

8.2. コンテンツ管理とSEO関連モジュール

  • Pathauto:SEOに最適なURLを自動生成
  • Metatag:メタタグ管理とSEO最適化
  • XML Sitemap:検索エンジン向けのサイトマップを自動生成
  • Redirect:リダイレクト管理とURL変更時の404防止

8.3. セキュリティ強化のためのモジュール

  • Captcha:スパム対策のキャプチャ機能
  • Password Policy:パスワード強度ポリシーの設定

10. まとめ

Drupalは、拡張性の高い強力なCMSとして、複雑なWebサイト構築に最適なプラットフォームです。DDEVを活用したインストール方法の導入により、開発環境の構築が簡単になり、モジュールやコアの更新も効率的に行えるようになりました。

本記事で紹介した基本的な使い方と実践的なTipsを活用すれば、初心者でもDrupalの導入と運用をスムーズに進めることができるでしょう。Drupalの学習曲線は確かに急な面がありますが、その分だけ柔軟性と拡張性というメリットを得ることができます。

セキュリティ、パフォーマンス、SEO対策などの面でも優れたDrupalは、中〜大規模サイトやエンタープライズレベルのWebサイト構築において、今後も重要な選択肢であり続けるでしょう。

amazee.io 
Kaito Kanekoの写真

この記事を書いた人: Kaito Kaneko

ANNAI株式会社

エンジニア、デジタルマーケティングを担当。山梨県在住。