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Drupal 10とは?長所・短所とDrupal 11の進化ポイントを徹底解説!
この記事の目次

Drupal 10とは

オープンソースCMSの代表格

Drupal 10は、オープンソースCMS(コンテンツ管理システム)の代表的な存在であるDrupalシリーズの主要バージョンで、2022年12月にリリースされました。執筆時点ではすでにDrupal 11もリリースされており、今後もさらなる機能拡張や改善が期待されています。Drupalは世界中で幅広く利用されており、特に以下のようなケースでよく採用されます。

  • 企業・官公庁・大学などの大規模サイト
  • 多言語サイトやコミュニティサイト
  • 複雑なワークフロー管理を必要とするサイト

Drupalは、PHPをベースにSymfonyフレームワークなどのコンポーネントを活用しているため、柔軟なカスタマイズが可能でありながら、堅牢性や拡張性にも優れています。

リリース背景

Drupalはメジャーバージョンごとに大きくアーキテクチャが変わる場合があります。特にDrupal 8以降、Symfonyをコアとして採用し、モダンなPHPのベストプラクティスを取り入れてきました。その流れを汲みつつDrupal 9、そしてDrupal 10と進化してきています。

Drupal 10では以下のようなアップデートが行われました。

  • Symfony 6への対応
  • CKEditor 5の採用(エディタ機能の刷新)
  • 古いテーマエンジン(Twigの古いバージョン)の廃止
  • 廃止予定機能の整理やセキュリティ対応の強化

Drupal 10の長所

1. モダンなコアアーキテクチャ

Symfony 6をコアに採用しており、モダンなPHPフレームワークとしてのベストプラクティスが取り入れられています。これにより、開発効率保守性が向上しています。

2. 強化されたエディタ体験(CKEditor 5)

CKEditor 5が標準エディタとして採用され、直感的な操作性と拡張性が向上。ドラッグ&ドロップや豊富なプラグイン機能を活用でき、コンテンツ作成者の利便性が大幅にアップしています。

3. 大規模サイト向けの拡張性

Drupalはコアだけでも多機能ですが、豊富なモジュール(拡張機能)がコミュニティ主導で開発・提供されています。要件に合わせてモジュールを選択することで、多様な機能を迅速に実装可能です。

4. 多言語サポートが標準搭載

Drupalは多言語機能をコアで提供しており、管理画面やサイト上の言語切り替えなど、多言語サイト構築が容易です。翻訳管理や言語ごとのコンテンツ管理なども標準でサポートされています。

5. セキュリティとコミュニティサポート

Drupalのセキュリティチームがコアや人気モジュールの脆弱性に迅速に対応しており、セキュリティパッチが定期的にリリースされます。また、大規模かつ活発なコミュニティが存在し、問題解決のためのドキュメントやフォーラム、Slackなども充実しています。

Drupal 10の短所

1. 学習コストの高さ

柔軟性や拡張性が高い反面、学習コストが高いのはDrupalの伝統的な課題です。独自の用語や設計思想に慣れるまで時間を要し、習熟するにはある程度の開発経験や勉強が必要です。しかし、Drupal CMSの最新リリースでは、初心者でも簡単にサイト構築ができるプラットフォームが提供され、直感的なインターフェースの強化により、従来求められていた専門知識のハードルも低減されています。詳細はこちらの記事をご覧ください。

2. 小規模サイトにはオーバースペック

Drupalは大規模サイト向けに設計されているため、小規模サイトの運用には機能過多になりがちです。小規模サイトであればWordPressや他の軽量CMSの方がシンプルかつ運用コストが低い場合があります。

3. ホスティング環境の制限

Drupal 10ではPHP 8.1以上などモダンな環境を要求するため、古いサーバー環境を利用している場合は環境移行が必要になります。また、サイトの規模が大きいほどリソース(メモリやディスクなど)を消費する傾向にあるため、ホスティング環境の選定は慎重に行う必要があります。

もしDrupal専用のホスティングを検討している場合、amazeeioのようなDockerベースのマネージドホスティングを活用するのも選択肢の一つです。Drupalに最適化された環境を提供しており、拡張性や保守性を高めることができます。

さらに、同サービスが提供するAUS(Auto Update Service)を利用すれば、セキュリティパッチやマイナーアップデートを自動化できるため、サイト運用の負荷を軽減し、最新かつ安全な環境を維持しやすくなります。

4. 特定のモジュールで日本語情報が少ない

Drupalコミュニティは世界的に活発ですが、一部のモジュールは英語のドキュメントやフォーラムが中心となり、日本語での情報が少ないケースがあります。そのため、英語の情報を参照する必要がある場合も多いです。

こうした情報不足の課題に対しては、ANNAIサイトがDrupalの最新情報を日本語で発信しており、日々の運用や問題解決に役立つ情報を得ることができます。詳しくはこちらをチェックしてください。

Drupal 11になって変わったこと

Drupal 11は、Drupal 10の次のメジャーバージョンとして、さらに開発体験やパフォーマンス面が向上しています。以下ではDrupal 10からDrupal 11にアップデートされた際の主な改善点を紹介します。

1. Symfonyのバージョンアップ

Drupal 10ではSymfony 6がメインでしたが、Drupal 11ではSymfonyの最新バージョンを採用しているため、さらなるセキュリティ強化とパフォーマンス改善が期待できます。

  • 速度向上: 新しいSymfonyコアの最適化により、処理速度とメモリ使用量が改善
  • メンテナンス性の向上: 最新バージョンへの追随により、長期的なサポートやアップデートを継続しやすい

2. エディタ機能のさらなる強化

Drupal 10で導入されたCKEditor 5が引き続きコアエディタとして採用され、より使いやすいUIや新プラグインが追加されています。

  • リアルタイム共同編集機能やコンテンツレビュー機能の強化
  • メディアライブラリとの連携強化で画像・動画の管理がさらに簡単に

3. テーマシステムの刷新

Drupal 11では、フロントエンドのテーマシステムがよりモダンなアプローチへとアップデートされました。

  • 新しいデフォルトテーマの採用: レスポンシブ・アクセシビリティを考慮したデザイン
  • Twigバージョンアップ: テンプレートのキャッシュ機構やパフォーマンスが改善

4. マイグレーションパスの最適化

メジャーバージョンアップでは常に課題となるのがマイグレーションです。Drupal 11では、Drupal 10からの移行をよりスムーズに行えるよう、コアにいくつかの改善が導入されています。

  • 自動化ツールの強化: ComposerやDrushを用いたアップデート時の依存関係確認が簡単に
  • モジュールの互換性向上: D11対応モジュールのリリースが早期に行われるようコミュニティ全体で取り組み

5. 管理画面のUX向上

Drupalの管理画面は機能が多く、操作が煩雑になりがちでしたが、Drupal 11では管理UI/UXの改善が図られています。

  • コンテンツ一覧画面のフィルタリングカスタマイズ機能の強化
  • ダッシュボード機能の拡充で、サイト管理者が必要な情報を素早く把握可能に

まとめ

Drupal 10は、Drupalシリーズの最新技術を取り入れた堅牢かつ柔軟なCMSとして、多言語サイトや大規模サイトに最適なプラットフォームです。CKEditor 5の採用やSymfony 6への対応によって、開発者・コンテンツ編集者双方にとって大きなメリットがあります。一方で、学習コストや小規模サイトへのオーバースペックといった課題も抱えています。

次のメジャーバージョンであるDrupal 11では、Symfonyのさらに新しいバージョンの採用やエディタ機能の強化、テーマシステムや管理UIの刷新などが進み、Drupal 10からの移行をスムーズに行えるよう、コアとコミュニティ全体で取り組みが行われています。

もし、これからDrupalを導入・移行を検討する場合は、サイト規模・機能要件を正確に把握したうえで、Drupal 10もしくはDrupal 11(リリース時期やサポート状況に合わせて)を選択するのが良いでしょう。大規模サイトや複雑な要件であれば、今後のバージョンアップを見据えながら、Drupal特有の学習やチーム体制の構築を計画的に進めることをおすすめします。

Drupalは常に進化を続けており、コミュニティ主導で新機能や改善が絶え間なく行われています。最新情報をキャッチアップすることで、より安全かつ効率的にDrupalを活用できるでしょう。

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この記事を書いた人: Ryunosuke Matsuoka

猫好きなエンジニア兼マーケティング担当。趣味はサッカー観戦。