AI時代のDrupal開発、その先にあるもの
ANNAIが5つのセッションで伝えたメッセージ
2026年に開催された「DrupalCamp Tokyo 2026」は、Drupalコミュニティに関わる開発者や企業が集まり、最新技術や事例、コミュニティの未来について議論する国内最大級のイベントです。
ANNAI株式会社は今回、4つのセッションに登壇するとともに、合同会社ユビキタスライフスタイル研究所が企画したパネルディスカッションにもパネラーとして参加しました。
今回ANNAIがお伝えしたテーマは、AI時代のDrupal開発だけではありません。AIを活用した開発手法、OSSコミュニティの未来、「作る」を「まもる」ためのプラットフォーム戦略、そしてそれらを支えるCMS基盤まで、AI時代に価値あるWebサービスを提供し続けるために必要な考え方を、それぞれ異なる視点からご紹介しました。
一見すると異なるテーマに見える5つのセッションですが、その根底にあったのは、「AI時代においても、開発者や運用者がより自由に価値を生み出し、安心してサービスを提供し続けられる環境をつくる」という共通の考え方です。AIをどう活用するかだけではなく、それを支えるコミュニティや継続的な運用、柔軟なプラットフォームまで含めて考えることが、これからのWeb開発には欠かせません。
本記事では、ANNAIが登壇・参加した各セッションを振り返りながら、Drupal開発の現在地と、その先に見据える未来をご紹介します。
「Drupalでパラレル開発がした〜い」

佐藤によるセッションでは、AIコーディングエージェント時代に適したDrupal開発の新しいワークフローを紹介しました。
近年は、Claude CodeなどのAIエージェントを活用し、複数のタスクを並行して進める開発スタイルが広がりつつあります。一方で、Drupalではローカル環境やデータベースの扱いが複雑で、複数環境を同時に運用することは容易ではありません。
そこで紹介されたのが、DDEVとGit worktreeを組み合わせた開発手法です。ブランチごとに独立した開発環境を構築し、それぞれでAIエージェントを動かすことで、複数の実装を並行して進められる環境を実演しました。
実際の現場では、この仕組みにより開発効率の向上だけでなく、レビュー対応や割り込み作業にも柔軟に対応できるようになったとのことです。AI時代の新しいDrupal開発スタイルを、実践例を交えながら紹介するセッションとなりました。
「Claude CodeでつくるDrupal Themingエージェント」ClaudeCodeでつくるDrupal

今によるセッションでは、Claude Codeを活用し、これまで人が行ってきたDrupalのTheming作業をAIへ置き換えていく取り組みが紹介されました。約40本のViewsを対象とした大規模プロジェクトを題材に、AIによるThemingを実用レベルへ引き上げるまでの試行錯誤が共有されました。
当初は「デザインHTMLを渡せばTwigテンプレートが完成する」という理想を思い描いていましたが、実際にはそう単純ではありませんでした。DrupalのViewsは複数のテンプレートやフィールド情報が組み合わさって最終的なHTMLが生成されるため、デザインだけを手がかりにAIへ実装を任せると、見た目は正しくても実運用では問題となるケースが少なくありませんでした。
セッションでは、「フィールドの出所が分からない」「データのバリエーションを考慮できない」「HTML構造が微妙に異なる」といった失敗例を紹介。こうした経験から、まずAIにデザインを分析させ、フィールドとの対応関係や設計を整理した上で実装を進めることで、生成品質が大きく向上したことが共有されました。
また、HTML構造を自動比較する仕組みや、AI自身に改善案を提案させる試みなども紹介されました。適切な設計やプロンプトを与えることで、これまで人が担ってきたTheming作業をAIへ置き換えられる可能性が示されました。AIを単なるコーディング支援ツールではなく、実務を担うエージェントとして活用するための知見が詰まった、実践的なセッションとなりました。
OSSコミュニティはこれからどこへ向かうのか
「FOSSは転機を迎えているか?」

合同会社ユビキタスライフスタイル研究所が企画したパネルディスカッションでは、Drupal・WordPress・QGISのコミュニティリーダーが登壇し、それぞれのプロジェクトが築いてきた歴史やコミュニティ運営、資金調達の仕組み、そしてAI時代を迎えた現在の課題や今後の展望について議論が交わされました。
ANNAIからは紀野がパネラーとして参加し、Drupalコミュニティの立場から、大規模開発や公共分野で培われてきた強みや、オープンな議論を重視するコミュニティ文化について紹介しました。また、生成AIの普及によってコードそのものの価値が変化していく中でも、保守性や運用性、強固なアーキテクチャといったOSSならではの価値は、今後さらに重要になるとの考えが共有されました。
WordPress、QGISそれぞれの視点からも、コミュニティの持続性やガバナンス、資金調達、AIとの共存について意見が交わされ、プロジェクトごとの違いだけでなく、FOSSに共通する課題や可能性が浮き彫りとなりました。技術だけではなく、人やコミュニティがOSSを支え続けることの重要性を改めて考える機会となるセッションでした。
※本セッションは合同会社ユビキタスライフスタイル研究所の企画によるパネルディスカッションです。詳細はDrupalCamp Tokyo 2026公式サイトおよび合同会社ユビキタスライフスタイル研究所のWebサイトをご覧ください。
「作る」を「まもる」へ
OSS CMSをマネージドSaaSに変えるANNAIのプラットフォーム戦略

太田垣によるセッションでは、「サイトは作って終わりではなく、安心して使い続けられることにこそ価値がある」という視点から、ANNAIが目指すプラットフォーム戦略が紹介されました。
公共機関や大学、大規模企業向けのDrupal案件では、構築だけでなく、保守・更新・セキュリティ対応・バージョンアップ・コンテンツ移行・インフラ運用など、長期的な運用負荷が大きな課題となります。ANNAI自身も数多くのプロジェクトを支援する中で、「運用の重さ」こそがOSS普及の壁の一つであることを実感してきました。
そこでANNAIが目指しているのは、新しいCMSを作ることではなく、OSSを誰もが安心して使い続けられる環境を整えることです。運用や保守、インフラといった負担を仕組みで支えることで、開発者やパートナー企業が本来注力すべき価値創造に集中できる環境を目指しています。
その実現に向けて紹介されたのが、エンタープライズ向けPaaS、自動アップデートサービス、CMS移行ツール、行政向けテンプレート、AI基盤などを組み合わせたプラットフォームです。それぞれを個別のサービスとしてではなく、「OSSをもっと使いやすくするための道具」として提供することで、「作る」だけでなく「まもる」ことまで支える仕組みづくりが紹介されました。
セッションの終盤では、この取り組みをさらに広げるため、開発パートナーやリセラー、コミュニティメンバーの募集についても紹介されました。OSSの価値をより多くの現場へ届けるために、その裏側から支え続ける──それがANNAIの目指すプラットフォーム戦略です。
AI時代を支えるCMSプラットフォーム
「そのCMS基盤に、これらの選択肢はありますか?」

このプラットフォーム戦略を支える具体的な基盤として紹介されたのが、amazee.ioです。
ANNAIが考える「安心してまもり続けられるOSS」を実現するためには、CMSだけでなく、その土台となるプラットフォームにも柔軟性が求められます。
セッションでは、「Drupal以外のCMSも自由に選べるか」「クラウドや契約形態を自由に選択できるか」「AIモデルを用途ごとに使い分けられるか」──参加者への問いかけから始まり、CMS基盤にも"選択する自由"が必要であることを提案しました。
その考え方を支えるのが、amazee.ioが掲げる「4つの自由」です。技術、CMS、インフラ、契約・調達という4つの観点から、企業や公共機関が自社の要件に合わせて柔軟に選択できるCMSプラットフォームという考え方を紹介しました。また、複数のLLMを用途に応じて使い分けられるAI基盤「amazee.ai」も紹介し、AI時代においてもベンダーロックインに縛られない柔軟な選択肢を提供できることを説明しました。
セッション後半では、協業パートナーである株式会社マカルーデジタル代表取締役・菱川拓郎氏にもご登壇いただきました。CMSホスティング事業を立ち上げる中で、自由度・標準化・運用負荷・価格のバランスに悩みながらもamazee.ioを採用し、インフラ運用ではなくCMSサービスの提供という本来注力したい領域へ集中できるようになった経緯をご紹介いただきました。
さらに、日本国内ではANNAIによる日本語サポートや導入支援、Lagoonに関する知見の提供が事業化を後押ししたことにも触れられ、実際の利用者だからこそ語れるリアルな視点から、「自由な選択肢を持てるプラットフォーム」の価値を具体的に感じられるセッションとなりました。
おわりに
今回の5つのセッションを通してANNAIがお伝えしたかったのは、「AI時代だからこそ、開発者や運用者がより自由に価値を生み出し、安心してサービスを提供し続けられる環境をつくること」の重要性です。
AIによって開発手法は大きく変わりつつあります。しかし、その変化を価値へとつなげるためには、AIを正しく活用するための知見だけではなく、支え合うコミュニティ、継続的な運用を支える仕組み、そして柔軟に選択できるプラットフォームが欠かせません。
ANNAIはこれからも、Drupalをはじめとするオープンソース技術とAIを組み合わせながら、お客様やパートナーの皆さまとともに、「作る」だけでなく「まもる」ことまで見据えた、持続可能なWeb開発の未来を築いていきます。
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