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昨今、ウェブ業界ではデカップルドウェブサイト(通称ヘッドレス・サイト)が大流行しています。クリエイティブで魅力的、かつユーザーフレンドリーなサイトを作りたい場合に最適な選択肢として注目されているデカップルドサイトには、興味深いメリットがあります。オーディエンスにリーチするための最良の方法を常に模索しているあなたにとって、この最新のトレンドがマーケティングの目標をより効果的に達成する上で役立つかどうかを調べたいのは当然のことでしょう。

しかし、誇大広告に振り回されないように気をつけましょう。ヘッドレスソリューションに投資する前に、デカップリングされたウェブサイトが本当にあなたのビジネスニーズを満たすかどうかを検討すべきです。

目標や目的を達成するために、ヘッドレスサイトが最良の選択肢となる場合もあります。しかし多くの場合において Drupal のような柔軟性・拡張性・適応性に富んだ CMS を使用したスタンダードなサイトは、ヘッドレスがもたらすと思われている利点の多くを提供し、それゆえ問題になりうる要素を減らしてくれます。

ヘッドレスの採用を判断する上で問うべき質問は「犠牲に見合うものを得ることができるか?」というものでしょう。正しく評価を行い、よくある誤解を解いていくことは、費用対効果分析を行った上で決断を下すのに役立つでしょう。

デカップルド/ヘッドレス・ウェブサイトとは?

ウェブサイトには 2 つの部分があります。フロントエンドは、ユーザーが見て触れる側です。バックエンドは、フロントエンドを機能させるためのもので、開発者がプログラムやコードを作成し、ユーザーに情報を提供するためのロジックを構築する場所です。

従来のウェブサイトでは、フロントエンドとバックエンドはあらゆる面でつながっており、1 つの実体を構成する 2 つの部分のようなものです。フロントエンドとバックエンドは、同じソフトウェアを使用し、同じサーバー上に存在します。ウェブサイトのコンテンツは、テンプレートやテーマを使って CMS によって直接表示されます。

これに対して、デカップルド(ヘッドレス)のウェブサイトは、2 つのウェブサイトにより成り立つイメージです。フロントエンドとバックエンドが別々のサーバーにあり、まったく別のソフトウェアを使う可能性もあります。また、それぞれでプログラミング言語も異なるかもしれません。もちろん、フロントエンドにはバックエンドが必要です。しかし、デカップルドサイトは、それら 2 つのシステムを API を介して連携します。

その複雑な構造のため、デカップルドサイトの構築には、従来のサイトの 2 倍の時間がかかり、コストも大幅に増加します。

デカップルド構造はパフォーマンスを向上させるか

ヘッドレスサイトの利点として最も広く知られているのはパフォーマンス、特にロードタイムとスピードの点です。デカップルド構造のサイトの優れた例として、Facebook が挙げられます。彼らは React と呼ばれる JavaScript のフロントエンドフレームワークを構築し、リアルタイムの更新やユーザー同士のやりとりを可能にしました。React はバックエンドがサイト全体のコンテンツを更新するのを待つ必要がないため、ユーザーエクスペリエンスはシームレスでスムーズなものとなります。

これはフロントエンドのソリューションとして React を採用している Facebook をはじめ、Netflix や Airbnb のようなユーザーエクスペリエンスを重視する大企業にとっては素晴らしいことでしょう。また、高度なユーザーニーズに対応する必要があるビジネスに対しても同様です。ヘッドレスサイトは、ユーザーがアプリから利用する場合、特にモバイルデバイスを使用している場合によりダイナミックな体験を提供する傾向にあります。ヘッドレス/デカップリング構造は、ユーザーが大規模なプラットフォームに期待するであろう瞬時のレスポンスを実現します。

しかし、Facebook、Netflix、Airbnb は巨大かつ非常に複雑に入り組んだウェブサイトです。ほとんどの企業はそれほどの複雑さと規模を必要としていません。そのため多くの企業にとって、ほんのわずかなレスポンスタイムの短縮は、投資に見合うものではないでしょう。

さらに、デカップリングされたサイトであっても、ハイパフォーマンスに向けた構築と最適化が必要です。そのため、サイトの構築やメンテナンスが適切に行われていなかったり、フロントエンドのアプリケーションが不便だったりデザインが悪かったりすると、期待したほどのパフォーマンスの向上は見込めません。

ほとんどのウェブサイトでは、しっかりと構築された従来型のサイトでも、デカップルドと同等の、そして場合によってはそれ以上のスピードとパフォーマンスを提供することができます。

社内のチームにとって、デカップルドウェブサイトはデザインやメンテナンスがしやすいか

デカップルドウェブサイトがこれほど話題になっているもう一つの理由は、最近は社内技術チームがフロントエンド・エクスペリエンスに注力するケースが増えているからです。彼らは単体のモバイルアプリケーションやインターフェースを開発する方法は知っていますが、包括的なインフラやフレームワークを構築するためのバックエンドのスキルは持っておらず、結果として Contentful のような既製の CMS を選択することになります。そして自社開発した無数のフロントエンドアプリケーションをそのようなプロプライエタリのバックエンドに接続するのです。

バックエンドのインフラは長い間変更しないまま、フロントエンドのアプリやディスプレイ、インターフェースを頻繁に更新している企業は、デカップルドの恩恵を受けやすいでしょう。例えばある大手保険会社が、会社の商品を紹介する親サイトを持っており、そこに対して各支店ごとに小さなサイトが多数つないでいるとします。このような状況では、各支店が親サイトのバックエンドに触れることなく、簡単に小さなカスタマイズを行うことができるヘッドレスウェブサイトが最適なソリューションかもしれません。

しかし、従来のウェブサイトでもこのようなニーズに応えることは可能です。拡張性と適応性に優れた Drupal のような CMS を使えば、強力なコンテンツ戦略を構築し、編集やキュレーションの責任を組織内で共有することが容易になります。また、専門家であるパートナーは、デスクトップでもモバイルでも、美しく快適なアプリケーションを実現できるインテグレーション、スクリプト、ルールを開発することができます。

先述のとおり、デカップルドを選ぶか否かは、得られるものがコストを上回るかどうかということになります。だからこそ、デカップルド型サイトの欠点をしっかりと見極めることが重要なのです。

デカップルドサイトの欠点とは

デカップルドサイトを実現するには、少なくとも 2 つの大きな欠点があります。どちらも時間の経過とともに不必要な頭痛の種をもたらしたり、問題を引き起こす可能性があります。

デカップルドサイトは、選択する CMS のタイプにより柔軟性や成長が制限される可能性があります

デカップルドサイトでも従来型サイトでも、CMS はマシン全体を動かすエンジンです。先に述べたように、デカップルドを活用するシナリオでは、フロントエンドチームが、プラグ・アンド・プレイ機能を備えたクローズドソースの CMS を使用することがほとんどです。

これらのプロプライエタリーなシステムはさまざまな機能を提供していますが、迅速・頻繁な機能の向上や追加はあまり期待できません。また、変更依頼をすると料金が発生します(そもそも変更自体が可能かどうか分かりません)。実際のところ、プロプライエタリシステムに企業が縛られてしまうことが多々あります。ニーズが変化する可能性がある場合、クローズドソースの CMS は最適な選択ではありません。

これを解決するには、優れた開発者を雇い、ユーザーエクスペリエンスとバックエンドサポート、柔軟性、スケーラビリティを考慮した分離型のサイトを構築することです。オープンソースの CMS であれば、フロントエンドがヘッドレスであろうとなかろうと、今後何年にもわたってマーケティングのニーズをサポートすることができます。さらに、将来的に結合型のソリューションに移行したい際には、そのための強固な基盤がすでに築かれていることになります。

デカップルドサイトは初期費用と期間の両方において、一般的にかなりのコストがかかります

ヘッドレスサイトは基本的に API を介して接続された 2 つの独立したサイトで構成されているため、構築と維持にはより多くのコストがかかります。以下のような点でコストが増加する可能性があります:

  • ウェブサイトを 2 つのサーバーでホスティングしたり、複数のソフトウェアパッケージやデザインオプションを購入したりすることで、コストがかさみがちになります
  • フロントエンドとバックエンドの開発には一般的に異なるスキルが必要とされるため、1 つのチームではなく、2つのチームにサイト制作を依頼する必要が生じます
  • ウェブサイトの機能に新しい技術や特殊な機能が含まれている場合、両方のチームで作業する必要があるため、それらの新機能を実装するためのスケジュールが長くなることが予想されます
  • また、メンテナンス作業にも時間がかかり、費用もかさみます

一言でいうとデカップルドサイトは複雑です。特にビジネスの発展や成長に伴い、バックエンドの追加開発が必要になった場合には、一見しただけではわからない複雑なコストと、より多くのプログラミングサポートが必要になります。複雑な企業のウェブサイトであれば、そのような投資をする価値があるかもしれませんが、インターネット上の大半のウェブサイトのようなシンプルなウェブサイトの場合はどうでしょうか?しかし、インターネット上の大半のウェブサイトのようなシンプルなウェブサイトでは、そのコストに見合うだけの価値はほとんどありません。

優秀なデベロッパーは、結合型とヘッドレス型の比較検討をサポートできます

従来型のウェブサイトとヘッドレス型のウェブサイトのどちらを採用するかを検討する際にできる最善のことは、知識が豊富で偏見のないベンダーに相談することです。優れたデベロッパーはあなたの目標を明確にし、ニーズを理解し、あなたの状況に最もマッチしたソリューションを特定する手助けをしてくれるでしょう(たとえ安価な方法を推奨することになったとしても)。

私たちは、一般的なサイトやデカップルドサイトを構築してきました。どのようなユースケースが各オプションに最適なのかを知っています。そして、あなたにとってどのルートがベストなのかを客観的に判断するお手伝いをさせていただきたいと思います。ぜひ、お話しましょう。

 
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この記事を書いた人: ANNAI株式会社

ANNAIは、2009年からDrupal専門のWebシステム開発会社として、世界規模で展開するグローバル企業や大学・自治体を中心に数多くのWebソリューションを提供。
CoreやModuleのコントリビューターなど、Drupalエキスパートが多数在籍。国内ユーザーコミュニティへも積極的にコミットし、定期的なセミナーの等の開催を通じて、オープンソース技術の普及や海外コミュニティとの緊密な連携を図っている。
Webシステムの企画・開発〜デザイン、クラウド運用までをワンストップで提供する他、Drupalのコーディングを評価する"Audit業務"や最適なモジュールの調査・選定等、幅広いコンサルティングを行っている。Drupalアソシエーション公式パートナー。

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