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アクイア(Acquia)は 2018 年末に日本法人を設立し、2019 年の 3 月 13 日に、アクイアジャパン設立イベントを開催し、日本市場への本格的な参入を発表しました(https://www.acquia.com/jp/events/jp190313)。

調査・アドバイザリー企業として著名なガートナーやフォレスターは、2014 年からアクイアをウェブ CMS やデジタル・エクスペリエンス・プラットフォームのリーダーとして評価しています。それ以来マーケットでの実績を上げ続け、2020 年のガートナーのマジック・クアドラントでは、アクイアは Adobe に次ぐ2番手と非常に高く評価されています。

アクイアは様々なプロダクトの可能性を模索し続けてきた歴史があり、特に過去数年で同社のプロダクトラインナップには大きな変化がありました。アクイアは日本語のウェブサイトを立ち上げたものの、プロダクトの説明は主に英語であり、また英語のビデオによるデモも多いことから、具体的にそれらのプロダクトを使って何が可能なのかを読み取るのが難しいように感じます。

シリーズ最初のこのポストでは、まずアクイアという会社がどのような変遷を経て現在のプロダクトラインナップに至ったか、またそれらのプロダクト群は総合的に何をもたらすかについて説明します。同時に、Drupal のスペシャリストである ANNAI がアクイアをどのようにサポートしているかについても触れたいと思います。アクイアの製品やサービスに興味があり、メリットについてより詳しく知りたい方、導入を検討されている方に役立てて頂ければ幸いです。

アクイアとは?

アクイアについて日本語で検索すると、上述の設立イベントに関連する記事やプロダクト情報、Drupal 認定試験についての情報が見つかりますが、そもそもアクイアとはどんな会社なのでしょう。

アクイアの歴史

アクイアは、ウェブ CMS として有名な Drupal プロジェクトの創始者およびプロジェクトリードであるドリーズ・バイテルトと、インベスターのジェイ・バストンにより 2007 年に創業されました。ドリーズが 2001 年に公開した Drupal はその拡張性の高さと柔軟性から、2000 年代中盤には大企業や政府・教育機関等のあいだで急速に普及が進みました。しかし当時は Drupal のホスティングおよびサポートを専門で行う企業は存在しなかったため、アクイアはそのニーズを引き受ける形でビジネスを開始しました。

しかし、アクイアは Drupal にのみ固執してビジネスを展開してきたわけではありません。ドリーズが “Fail fast, succeed faster”(「早く失敗し、より早く成功せよ」)と表現し、また以前の CEO トム・エリクソンの “Ready, fire, aim”(「用意、打て、照準合わせ」)と表現したリーン的な経営理念から汲み取れるように、同社は創業当初から失敗を恐れずに積極的に様々な試みを重ねながら事業展開の方向性を模索し続けてきました。

アクイアの戦略とその変遷

アクイアのプロダクト戦略に関してドリーズが 2017 年に投稿したブログポスト(https://dri.es/the-evolution-of-acquia-product-strategy)には、最初の 10 年はコンテンツマネージメント用ツールにのみフォーカスを当てていたものの、デジタルの世界で同社が勝ち残るために、ビジネスのフォーカスをデジタルエクスペリエンスにシフトしていった経緯が記されています。

Acquia roadmap as of 2017

2007 年創業時(左)と、次の 10 年の戦略(左)の図。ドリーズ・バイテルトのブログポスト(2017 年 10 月公開)より転載:https://dri.es/the-evolution-of-acquia-product-strategy

アクイアの現在

アクイアの提供する「デジタル・エクスペリエンス・プラットフォーム」とは?

アクイアの日本法人設立を知らせるプレスリリースには、アクイアは「デジタル体験プラットフォームのリーディングプロバイダーである」と書かれています。

デジタル体験(エクスペリエンス)とは、日本においてまだ馴染みの浅い言葉なのではないでしょうか。そして、デジタル体験プラットフォーム(Digital Experience Platform / DXP)は何を可能にするのでしょう。

ウェブ上にはデジタルエクスペリエンスに関しての様々な説明があり、概ね統一されているものの、厳格な定義は存在せず、中には他とは明確に異なる定義も存在するように見受けられます。アクイアのサイトでは、以下のように説明されています:

DXPとは、企業が顧客に優れたデジタル体験を提供できるようにするための製品の集合体です。

上記だけでは具体的には分かりにくいので補足しますと、ユーザーと企業のデジタルタッチポイントは、以前はマーケティング E メール、パソコンのブラウザー、スマートフォンのアプリや店頭での POS などに限られていました。しかし近年ではチャットボット、アマゾンの Echo やグーグルの Home、また様々な IoT 製品などの普及によりデジタルタッチポイントが急速に多様化しています。アクイアの提供するプラットフォームを活用することで、ユーザーが様々なタッチポイントを介して利用するサービスのエクスペリエンスを総合的にデザインすることが可能になります。

アクイアのプロダクトラインナップ

2020 年の時点でのプロダクトアップデートでは、製品が以下のように2つのカテゴリーに分類されています:

A diagram that categorizes Acquia's products into two groups

Q1 2020 Product Updates to the Acquia Experience Platform: https://www.acquia.com/jp/blog/q1-2020-product-updates-acquia-experience-platform

上の図では、2017 年のドリーズのブログの図に比べ、より詳細にアクイアのプロダクトラインナップを見ることができます。

アクイアのウェブサイトにはそれぞれのプロダクトの概要が説明されているものの、それらがどのように噛み合うのかが見えにくいのではないかと思います。以下には、それぞれのプロダクトがビジネスにとってどのような位置付けなのかを分かりやすいかたちに整理してみました(上の図には表示されていないプロダクトも含まれます):

プロダクト 概要 位置付け
Cloud IDE 開発環境の統一を可能にするツール

開発支援


 

ベストプラクティス実践支援

 


 


ホスティング

 


 

 

コンテンツ管理

 

 

運用保守

 

 

 

 

マーケティング
 

Acquia Lightning Acquia の作成した、コンテンツ編集に特化した Drupal ディストリビューション
Acquia BLT Drupal サイト開発におけるベストプラクティス実践支援ツール
Acquia Cloud CD 継続的デリバリー/デプロイメントツール(変更の継続的な導入を支援する仕組み)
Acquia Cloud Pipeline
Acquia Cloud

SLA を伴う Drupal アプリケーションのホスティング。また本番環境ならびにそれに近い開発・テスト環境を提供

Site Factory 基本構造・機能が同一の複数の Drupal サイトをまとめて運営・管理するためのプラットフォーム
DAM アセットの一元管理を可能に
Search アクイアが保守し、Drupal に最適化されたApache Solr
Support SLA を伴う Acquia Cloud 上の Drupal サイトや関連プロダクトのサポート。
Remote Administration セキュリティーアップデートの半自動適用(プランにより、マイナーアップデートの適用も可能)
Cloud Edge DDoS プロテクション
Cloud Shield VPN / IP ホワイトリスティング

Personalization(旧 Lift)

Drupal サイトコンテンツのパーソナライズ

Campaign Studio (Mautic)

マーケティングの自動管理ツール。アクイア独自のプラグインを提供
Campaign Factory 複数の Mautic インスタンスの一元管理を可能に
Customer Data Platform(旧 AgilOne) 様々なデジタルタッチポイントから得られた情報を元に顧客の動向を分析

上記サービスの中には、Enterprise サブスクライバーや、特定のプロダクトを利用しているクライアントのみが利用可能なものも含まれます

このように、アクイアのプロダクトは非常に多岐にわたります。それら一つ一つの位置付けを見ると、システムの開発や運用からマーケティング、そして顧客とのタッチポイントまでのあらゆる場面を総合的に網羅できるようデザインされていることがお分かりになるのではないかと思います。

ANNAI のアクイアに対するサポートとパートナーシップ

ANNAI はアクイアのパートナーとして登録しているだけではなく、アクイアを様々なかたちでサポートしています。

Drupal を正しく活用できる開発者の育成のため、アクイアは Drupal 認定試験の提供を 2014 年より開始しました。2019 年からこの認定試験を日本語で提供するにあたり、ANNAI はこの Drupal 認定試験の監訳を行いました。

2020 年 8 月に開催された Experience Acquia in Japan では、ANNAI は「Drupal テクニカルアンバサダー賞」を受賞しました。Drupal 認定試験の監訳をはじめ、ANNAI が日本において Drupal を普及していく上での貢献が認められた、大変嬉しい受賞となりました。

また、ANNAI では弊社の Drupal コンサルテーション・開発・保守サービス『KAIZEN』を提供していますが、その一部としてアクイアへの乗り換えをサポートする『KAIZEN for Acquia』の提供も開始しています。

まとめ

アクイアは、Drupal プロジェクトの創始者およびリードであるドリーズ・バイテルトにより、起業家と共同で 2007 年に立ち上げられました。設立当初は Drupal のホスティングとサポートを主に行っていたものの、ウェブ業界とマーケットの変化を読み取り、Drupal をビジネスの軸としながらもデジタル・エクスペリエンス・プラットフォームの提供へと舵を切りました。2014 年からはガートナーやフォレスターにも注目されるリーディングカンパニーへと成長を遂げました。

アクイアの提供するプロダクトは、ユーザおよび顧客のデジタル・エクスペリエンスを管理するプラットフォームから、その土台となるインフラ、またベストプラクティスの実践を容易にする開発者向けのツールまでを総合的に網羅しています。

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次回のポストからは、アクイアのプロダクトをそれぞれ取り上げながら、アクイアを使ってどのようにデジタル体験のデザインを可能にするのかについて詳しく掘り下げていきます。

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迅速でリッチなコンテンツ作成とブランドガバナンスの両立を可能にするアクイア Site Studio とは

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この記事を書いた人 : Mori Sugimoto

2006 年から欧米の大規模 Drupal 案件で開発・アーキテクチャーやコンサルティングなどを担当。コア・拡張モジュールの翻訳、また国内外でのミートアップのオーガナイズや Drupalcon での登壇およびボランティアなど積極的にコミュニティに参加。2008 年より Drupal Security Team コーディネーターを務める。オランダ在住。

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