広島大学は11の学部と11の研究科を有する、中国・四国地方を代表する総合大学です。1949年の開学以来、「自由で平和な1つの大学」の精神の下、幅広い人材を輩出し続けています。
文科省が実施しているスーパーグローバル大学事業のトップ型指定校としても選定されるなど、グローバルに活躍する人材の育成や研究においても活躍が目覚ましい大学です。
また、国立大学としては一早く、基幹システムのクラウド化を進めるなど、ITを活用した先進的な取り組みを行っています。
なぜDrupalが選ばれたのか?
Drupalを導入前、広島大学ではベンダーが独自に開発したCMSによりサイトを管理していました。日本の国立大学では、学部、学科などの各部門ごとに独立してサイトを運営しているのが一般的ですが、広島大学では他の国立大学とは異なり、学内の全ての情報を独自開発のCMS上で配信していました。
しかし、独自CMSは保守改修やバックアップなど、あらゆる点がベンダーに依存します。また、高額な保守コストが発生するという問題も生じていました。これらの問題を解決するため、オープンソースCMSへの切り替えを検討していました。
WordPressやMovable TypeではなくDrupalが選ばれた理由
このプロジェクトのキーポイントは、独自CMSの機能を再現できるかどうかでした。各部門ごとにコンテンツを作成し、それらが承認を経て公開されるという、部門単位でのコンテンツ管理機能や多言語対応など複雑な機能を実現する必要がありました。 これらの機能を無理なく実現できるCMSを選定する必要がありました。
当初、WordPressやMovable Typeが候補として挙がりました。しかし、これらのCMSで機能を実現するにはCMS本体の大がかりなカスタマイズが必要となり、サイトの保守メンテナンス性を維持したまま、目的とする機能を実装するのはかなり無理があるという結論に至りました。
一方、Drupalは標準で多言語サイト構築機能があり、非常に細かい権限設定もできます。また、部門毎に独立したコンテンツ管理機能を実現する拡張機能も備えています。これらを利用することで、無理のない機能の実現ができると判断してDrupalを採用することになりました。
求められる機能
複数の部門にまたがるコンテンツ管理・シェア機能
広島大学では、各部門が独立してコンテンツの作成や編集を行っていました。元々、独自CMSで実装されていたこの機能をDrupal上でも実現する必要がありました。また、ある部門で公開したコンテンツを、他の部門でクリック一つで承認後にシェアをする機能が求められました。
誰がコンテンツを書いても同じ見た目になる、コンテンツ作成機能
各部門の編集者が独立してコンテンツを編集できるのは非常に効率的な反面、作業者のITスキルには個人差があるため、見出し、リスト、などのコンテンツ内の要素の見た目を全ページで統一する事が困難でした。
そのため、誰がコンテンツを書いても、画像や見出し、各要素が同じ見た目になるような機能が求められました。また、モバイルデバイスからアクセスした際には、それらの要素がモバイルでの表示に最適化されている必要がありました。
多言語対応
各部門の各コンテンツ全てが多言語で公開できる必要がありました。
プロジェクトのゴール
このプロジェクトのゴールは、、現CMSの機能をDrupalで実装可能かどうかを、プロトタイプサイトを作成して検証することでした。プロトタイプとして3つの異なる部門により管理されている、「入試」「入学案内」「広大生の声」のセクションをDrupalで作成して実際に検証作業を実施しました。
検証の結果、課題として挙げた3つの機能がDrupalで実現できることを確認しました。最終的には、弊社がプロトタイプとして作成した、この仕組みを、そのまま学内の全部の部門に適用して広島大学のサイト全体がリリースされました。
大規模組織におけるWebガバナンス問題
今回の広島大学のケースでは、大規模な組織が抱える、Webガバナンス問題の解決が求められていました。 「Webガバナンス」とは組織内で運用されている、大量のサイトやコンテンツを、統制を保ちながら管理していく手法やコンセプトを意味します。 Webガバナンスというと、サイトの見た目を統一することだけを意味する、と解釈されることもありますが、どちらかというとシステムへの二重投資を控え適正なコストでWebを運営していくこと、またはWebで情報発信する際、部署間の連携を強化することにより、ビジネスチャンスを逃さないようにすることもWebガバナンスには含まれます。
大学では数十名〜数百名がサイトの編集に関わることもあります。Webガバナンスを導入することにより、統一したデザイン、統一したプラットフォームで情報提供することが可能になり、関係者に一定の質感で情報提供していくことができます。
各部門のコンテンツ編集者が、それぞれ自分の部門のコンテンツの編集を行うことで、作業を分担でき、より効率的な情報配信が可能になるのは言うまでもありません。 しかし、これによって生じる問題もあります。見た目や、レイアウトを全てのページで同じに保つのが困難になることです。編集者が多くなればなるほど、コンテンツの統制を取るのが難しくなります。
広島大学のケースではDrupal導入以前から1つのサイト内で全部門のページを管理していましたが、仮に各部門がそれぞれ独自に、独自のシステムを用いてサイトを立ち上げていた場合はどうなるでしょうか。 各サイト間で見た目を統一するのも困難になりますし、バナーを一つ変えるにも各部門のウェブ担当者が各サイトのバナーを更新する必要があります。
これはコストもかかりますし、ミスの原因にもなりかねませません。 組織が大きくなればなるほど、webガバナンスの問題とは真剣に向き合っていかなければなりません。ANNAIではこの問題に対し、Drupalを利用した解決方法を提案させていただいております。webガバナンスの問題に取り組もうとされている方はぜひ、一度ご連絡ください。