
Drupal 9 のシステム要件
この連載では Drupal 9 を前提としますので、最初に Drupal 9 のシステム要件を確認しておきましょう。Drupal の公式サイトで次の資料が公開されています。
https://www.drupal.org/docs/system-requirements
Drupal を動かすには、データベース、PHP、Webサーバーの3つが必要になります。まずデータベースは、MySQL やその互換ソフトウェア(MariaDB、Percona Server)が推奨されています。PHP は バージョン 7.3 以上が必要です。Web サーバーは、Apache のほか Nginx も広く使われています。各要素とも他にもサポートされる製品がありますが、最初はここで挙げた最も一般的なものから始めるのが良いでしょう。。
Drupal 9 のシステム要件一覧表
システム要素 | サポートされる製品/バージョン | 備考 |
---|---|---|
データベース |
MySQL 5.5.3 以上 |
他に PostgreSQL、SQLite もサポート。 |
PHP | 7.3 以上 | 7.0〜7.2 でも動作するが非推奨 8.0 は Drupal 9.1.0 以上で動作 |
Webサーバー |
Apache 2.4.7 以上 |
Apache は mod_rewrite が必要(Clean URL モジュールのため) |
Drupal 9 を動かす方法
Drupalを動かすには、次のような方法が考えられます。
- ローカルで動かす方法
- クラウドサービスを利用する方法
- レンタルサーバーを利用する方法
最終的にサイトをホストするにはクラウドサービスやレンタルサーバーを利用することになりますが、サイト構築や開発の過程では、やはりローカル環境が必要になると思います。今回はまず、ローカル環境にインストールする方法を紹介します。ローカル環境で Drupal を動かす方法については、ANNAI マガジンの 「Drupalのローカル開発環境の構築方法について詳細解説」 に解説があります。少し古い記事になりますが、中で紹介されている Dropfabrik は2021 年現在もメンテナンスされています。
この記事で整理されているように、Drupal のような Web システムをローカル環境で動かすには次の 3 種類の方法があります。
- ホスト OS 上で直接実行する方法
- 仮想マシンを利用する方法
- コンテナを利用する方法
以下、順に紹介します。
ホスト OS 上で直接実行する方法
Drupal は、一般的な LAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)環境で動作します。普段の作業に使う OS は Mac や Windows の人が多いと思いますが、同じ環境で Drupal を動かすには、それぞれの OS 用にビルドされた Apache、MySQL、PHP をインストールする必要があります。これを簡単に実行するお手軽インストールパッケージが複数存在します。
さらに、Drupal のインストールまで含めてサポートしてくれるものとして、Acquia 社が配布している Acquia Dev Desktop や、Bitnami の Drupal Stack が挙げられます。こうしたパッケージを利用すれば、簡単にローカル開発環境を構築できます。Acquia Dev Desktop については、ANNAI マガジンの過去記事 「Acquia Dev Desktopで、Drupal 8のローカル開発環境を構築しよう」 でインストール手順を解説していますのでチェックしてみてください(注:Acquia Dev Desktop は 2021/6/30 でサポートが終了します)。ここでは Bitnami の Drupal Stack について説明します。
Bitnami は、さまざまなオープソースアプリケーションのワンクリック・インストールを実現する自己完結型のパッケージを提供しています。それを用いて、既存の環境と干渉することなく目的のアプリケーションを導入できます。使い方は簡単で、ダウンロードページからインストーラをダウンロードして実行するだけです。Drupal の場合は以下のページからダウンロードします。
- Bitnami Drupal Stack https://bitnami.com/stack/drupal
インストールが完了すると、Drupal Stack Manager Tool という管理画面から MySQL やApache サーバーの起動/停止や構成、PHPMyAdmin によるデータベース操作などができます。

Drupalサイトはローカルホストの/drupal/ディレクトリとしてアクセスできます。

ただし、初期状態ではサイトの言語が英語になっているので、管理画面の UI を日本語にするには、次の 2 つのモジュールを有効にしてから日本語を設定します。
- Language
- Interface Translation
Drupal の言語設定の詳細は改めて紹介したいと思います。
ブラウザから操作するだけなら特別な調整は不要で、まさにワンクリックでローカルの Drupal サイトを立ち上げることができます。手軽に Drupal を試せる選択肢だと思います。
仮想マシンを利用する方法
デスクトップ OS 上に直接環境を構築する代わりに、Linux 等の仮想マシンを立ち上げて、その中でサイトを構築する方法もあります。ホスト OS とは完全に独立した環境を構築できるほか、より本番環境に近いプラットフォームで開発作業を行える、Linux の豊富な開発ツールが利用できる、クラウド環境との親和性が高い、などのメリットがあります。
仮想環境の構築には様々な手法があります。Windows では Hyper-V が OS レベルでサポートされていますが、Windows 10 Home などでは利用できないという制約があります。macOS も OS レベルでのハイパーバイザー機能はありますが、Parallels や VMware などのサードパーティーの商用ツールなどでないと簡単には利用できません。一方、オープンソースの仮想環境としてはVirtualBox があり、VirtualBox を含む仮想環境の構築・管理ツールとして Vagrant などがありますが、Drupal 専用にそれらを組み合わせたオープンソースの Drupal VM が簡単に Drupal 9 の仮想環境を構築し、様々にカスタマイズできるツールとして知られています。
コンテナを利用する方法
これは Docker コンテナを利用する方法です。コンテナは OS の カーネルを共有しながら、アプリケーションやファイルシステムを独立して実行できる仕組みです。仮想マシンより軽量であり、少ないリソースで複数のミドルウェアを連携させたり、アプリケーションを様々に組み合わせて動作確認することが容易です。当初はコンテナ間の連携は面倒でしたが、現在は Docker と同時にインストールされる Docker Compose を利用することで簡単に連携することができます。
さらに、最近ではいわゆる LAMP 環境を容易に Docker Compose で実行する DDEV というオープンソースプロダクトがあり、Drupal や WordPress などがコンテナ環境で即座に実行できます。最初の方でご紹介した Dropfabrik を使っても Docker Compose で簡単に Drupal サイトが立ち上げられます。
まとめ
今回はローカル環境で Drupal 9 を動かすための選択肢と、その具体例として Bitnami Drupal Stack や Drupal VM さらには DDEV を利用する方法を紹介しました。
次回はクラウドサービスやレンタルサーバーで Drupal を動かす方法を見ていきたいと思います。
Drupal 8初心者講座バックナンバー
Drupal初心者講座について
第1回 歴史に見るDrupal のDNA
第2回 Drupalはフレームワークか?CMSか?
第3回 Drupalの特徴
第4回 Drupal 8のインストール(1)
第5回 Drupal 8のインストール(2)
第6回 コンテンツを投稿してみる
第7回 ボキャブラリとタクソノミーを使う
第8回 コンテンツ管理におけるDrupalと他のCMSとの比較
第9回 Drupal 8のブロックシステム
第10回 Drupalの標準クエリービルダ Views
第11回 Drupalと他のCMSのクエリビルダー機能を比較
第12回 Drupal 8の多言語機能と他のCMSやサービスとの比較
第13回 Drupalの権限設定とWordPressやMovable Typeとの比較
第14回 Drupalのテーマシステムについて
第15回 Drupalの拡張モジュールの選定と利用方法
第16回 Drupalをもっと知りたい方に向けた各種情報