Drupal 初心者講座

第 5 回 Drupal 9 のインストール (2)

第 5 回 Drupal 9 のインストール (2)
この記事の目次

汎用のクラウドサーバーサービスを利用する方法

まず、一般的なクラウドサーバーサービス上に Drupal サイトを構築する方法があります。この種のサービスとして、たとえば次のようなものが挙げられます。

これらは、CPU やネットワークといったサーバーインフラをサービスとして提供するものなので、その上で稼働するアプリケーション環境は基本的に自分で構築する必要があります。ただし、Drupal のような非常にメジャーなアプリケーションでは、導入に必要な情報や、最初から導入された状態でサーバーを立ち上げるオプションなどを用意しているサービスも増えています。例を挙げます。

AWSへのDrupal導入情報

Google Cloud への Drupal 導入情報

Azure への Drupal 導入情報

さくらのクラウドへのDrupal導入情報

こうした情報を利用することで Drupal サイトを構築できますが、それぞれのサービスや Drupal 自体のインストールに関して一定の知識やスキルは必要になります。また、そのサービス上でサイトを運営することが前提の選択肢になるでしょう。

異なるクラウドサービスを共通のUIで管理できるBitnamiの紹介

ところで、異なるクラウドサービスに一貫した手順でアプリケーションを導入できる興味深い製品として、前回も紹介した Bitnami があります。前回紹介したのはローカル版のインストーラでしたが、他にもブラウザだけで試せる(Bitnami のクラウドサービス上で動かす)デモ版、Docker コンテナ版のほか、クラウド版もあります。

https://bitnami.com/stack/drupal

クラウド版は、Bitnami のサービスが提供する共通の管理 UI を通じて、複数のクラウドサービスに Drupal のようなアプリケーションを簡単に導入・稼働させる機能で、現在 AWS、Azure、GCP など 7 つのクラウドサービスに対応しています。

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Bitnami Drupal Stack クラウド版の管理画面 (AWS 用)

クラウドサービス上の自分のアカウントにアクセスするための資格情報を Bitnami 側に登録しておくことで、Bitnami のサービス上の UI から数回のクリックとオプション指定で、各社のクラウドサービス上に Drupal サイトを構築できます。

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導入アプリケーションに必要な情報とサーバーのオプションを指定してインストールできる

また、こうした外部のクラウドサービスを利用する方法のほかに、Bitnami 自体もクラウドサービスを提供しており、このサービス上に Drupal を導入することもできます。サービス間の連携が必要ない分、この方が簡単です。

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Bitnami のクラウドサービス上に Drupal をインストールする画面

サーバーの設定からアプリケーション導入まで簡単・確実に完了できるので、クラウドサービスの基本的な知識があれば、Drupal を含むさまざまなアプリケーションを手軽に試してみることができます。なお、正式に利用する場合は、いずれのサービスも課金が発生する事に注意してください。無料サービスの範囲を上手に利用すれば、あまりコストをかけずにクラウド上の Drupal を試すことができます。

Drupal 専用のサービスを利用する方法

インフラに加えて、Drupal を動かすための LAMP スタックと Drupal をセットにして、すぐに使える環境を提供するサービスもあります。こうしたサービスでは環境が最初から Drupal に最適化されているほか、開発や運用に関するサポートも用意されているものが多く、環境のメンテナンス全体をアウトソースする場合の選択肢となります。具体例をいくつか紹介します。

Acquia Cloud

Acquia は、Drupal の創始者である Dries Buytaert 氏が共同設立者であり CTO を務める企業です。Acquia Cloud は、Drupal に最適化された同社のクラウドサービスで、種々の開発支援ツールや高度な信頼性を特徴とします。詳しくは、Acquia 社のサイトを参照してください。

https://www.acquia.com/products-services/acquia-cloud

Pantheon

Pantheon は、第1回で紹介した DeanSpace の Zack Rosen 氏が仲間と設立した会社です。AWS 上で Drupal と Wordpress に特化したホスティングサービスを提供しています。Pantheon のサービスは、最初から開発用のサイトとステージング用のサイトが用意されるなど、開発者指向である点が特徴です。

https://pantheon.io/

Pantheon を利用した Drupal のインストール手順については、弊社監修の『Drupal 8 スタートブック―作りながら学ぶWebサイト構築』や ThinkIT での連載『初心者でも挫折しないゼロから始めるDrupal 8入門』に詳しくまとめていますのでご覧ください。また、『Pantheon で構築した Drupal 8サイトを別の環境に移動する方法』を ANNAI マガジンに掲載していますので、こちらも合わせてお役立てください。これらの記事では Drupal 8 を例としていますが、Drupal 9 でも同じ手順でインストールすることが可能です。

simplytest.me

上の2つとは少し趣旨の異なるサービスで、Drupalのコアや、拡張モジュールやテーマをテストするためのサンドボックス環境です。特定バージョンのコアのほか、モジュールやテーマ本格的に使用する前に、試しに入れて動かしてみることができます。

http://simplytest.me/

トップページでコアのバージョンと追加インストールしたいモジュールやテーマのプロジェクトを入力して [Launch sandbox] をクリックすると、必要なファイルをサービス上でダウンロードし、準備ができたところでインストーラが起動します。あとは、インストーラの指示に従ってインストールするだけです。起動したサイトは現状、24 時間で無効となり自動的に削除されます。

永続的に運用するサイトには使えませんが、試用やテスト、デモなどに利用するには非常に使い勝手の良いサービスです。24 時間以内で終わるチュートリアル用の環境としても役立つでしょう。patrickd 氏が開発した無料のサービスですが、気に入った場合は open collectiveを通じて寄付も受け付けています。

一般的なレンタルサーバーを利用する方法

一般的なレンタルサーバーは PHP や Apache やデータベースがインストールされた状態でサービスが提供され、その上に 様々なサイトを構築することが可能です。Drupal の動作確認を明示するサーバーも増えてきました。Drupal の稼働実績があるサーバーとして、例えば次のようなものがありますが、いずれも現時点では Drupal 8 までの実績です。またこれらのレンタルサーバーは汎用のクラウドサーバーとは異なり、OS やミドルウェアのバージョンアップは通常サーバー会社が管理するため、動作する Drupal のバージョンに制約が発生する場合があります。

エックスサーバー

動作確認済みプログラムとして現在は Drupal 8 までとなっています。

 https://www.xserver.ne.jp/manual/man_install_outside_program.php 

特別な設定は不要で、同サーバーのマニュアルに従って Drupal サイト用のデータベースを用意しておけば、あとはローカル環境とほぼ同様の手順でインストールできます。

さくらのレンタルサーバー

利用者が多いこともあり、Drupal のインストールに関する情報も多く発信されているレンタルサーバーです。ただし、このサーバーは、Drupal 標準の .htaccess で使用されている Options という指定が禁止されており、"500 Internal Server Error" というエラーが発生するため、この指定を無効にした専用の .htaccess に差し替える必要があります。Drupal を動かすにはやや手間のかかるサーバーですが、情報は豊富に見つかります。

CPI

CPI は、Drupal を含む CMS ツールのインストーラを提供するレンタルサーバーとしても知られています。CPI サーバーに Drupal をインストールする手順については、ANNAI マガジンでも紹介していますので、参考にしてください。 記事では Drupal 8 を扱っていますが、Drupal 9 でも手順は変わりません。 

https://annai.co.jp/article/d8-install-cpi

その他

Drupal の動作が確認されているサーバーは他にも多数あります。基本的には、Apache、MySQL、PHP が使えれば動作しますが、バージョンの制約もあるので、Drupal の使用を目的にサーバーを選択する場合は注意が必要です。なお、Drupal の動作を標榜してインストール手順を掲載しているレンタルサーバーの中にも、想定している Drupal のバージョンが古いものや、個人サイトを国内の公式サイトのように誤解して掲載しているものもあります。こうしたサーバーは前提としてしている情報が古かったり不正確な可能性があるので、使うのは避けた方が無難でしょう。

なお、本格的に Drupal を使う場合は Drush というコマンドラインユーティリティの利用が欠かせません。Web サイトとしては動作しても、コマンドラインの PHP のバージョンが合わずに Drush が正常に動作しなかったり、それ以前に SSH が使えないケースもあるので、Drupal サイトを運用する前提の場合は、そうした点も考慮する必要があります。


今回紹介した 3 つの方法の特徴と前提スキルをまとめます。それぞれの状況に応じて、最適な方法を選択するための参考にしてください。

方法 特徴 前提スキル
汎用のクラウドサービス サーバーのインフラをアウトソースすることが目的なので、Drupal サイトの導入自体は自分で行う必要がある。

Drupal の導入スキル
各クラウドサービスの利用スキル

Drupal専用のサービス 稼働に必要なインフラ整備から Drupal サイトの導入・立上げまでが自動化される。 インストール済み Drupal サイトを扱うスキル(ただし、開発環境として使う場合は当然 Drupal 開発に関する知識全般が必要)
レンタルサーバー 共用サーバー上でサイトをホストすることでサーバーの運用管理をアウトソースすることが目的なので、Drupal サイトの導入自体は自分で行う必要がある。

Drupal の導入スキル
各レンタルサーバーの利用スキル

 

方法 メリット デメリット
汎用のクラウドサービス

全てを自分で管理できるため、システム構成を柔軟に変更可能。
例えば、Drupal とWordPress を 1 つのクラウドサービスでホスティングするなど。

PHP、Apache、MySQL などのミドルウェアの設定とセキュリティー更新は自身で行う必要がある。
Drupal専用のサービス

PHP、Apache、MySQL などのミドルウェアの設定とセキュリティー更新が自動で行われる。
Drupal のインストールが自動で行われる。
Drupal のセキュリティ更新を自動的に通知してくれる (契約内容による)。

各サービスに依存した設定がされるケースがあり、他のサービスへの移行が難しい場合がある。
レンタルサーバー

コストが安い。
PHP、Apache、MySQL などのミドルウェアの設定とセキュリティ更新が自動で行われる。
日本語の情報が豊富。

各レンタルサーバーの事情に合わせて .htaccess などの設定を変更する必要がある。
ミドルウェアのバージョンによっては Drupal の特定のバージョンが正常に動かないケースがある。

以上、前回と今回に分けて、Drupal をインストールして使えるようにするところまでの方法を紹介しました。次回からはいよいよ、Drupal が提供する個々の機能を取り上げていきたいと思います。

ANNAI株式会社の写真

この記事を書いた人 : ANNAI株式会社

ANNAIは、2009年からDrupal専門のWebシステム開発会社として、世界規模で展開するグローバル企業や大学・自治体を中心に数多くのWebソリューションを提供。
CoreやModuleのコントリビューターなど、Drupalエキスパートが多数在籍。国内ユーザーコミュニティへも積極的にコミットし、定期的なセミナーの等の開催を通じて、オープンソース技術の普及や海外コミュニティとの緊密な連携を図っている。
Webシステムの企画・開発〜デザイン、クラウド運用までをワンストップで提供する他、Drupalのコーディングを評価する"Audit業務"や最適なモジュールの調査・選定等、幅広いコンサルティングを行っている。Drupalアソシエーション公式パートナー。

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