Drupal さんの旅行記 第二章:暗雲を振り払う
旅行記第一章では、Drupal さんが近隣の町々を訪ねて得た知見を元にどのようなイニシアティブで Drupal 村の状況改善を図ったかについてが語られました。しかし暗雲は濃くなるばかりで、外からは Drupal 村が見えなくなりそうな程でした。さて、Drupal さんはこの状況をどのように乗り越えるのでしょうか。
オープンウェブ宣言
Drupal 村をより良くする要素の特定とイニシアティブへの取り組みにも関わらず、村には暗雲が立ちこめていました。ある夜、Drupal さんは閉鎖型のウェブに囚われて身動きが取れなくなった友人たちのことを思い心を痛めていました。すると、ワールドワイドウェブの生みの親ティム・バーナーズ=リーが夢枕に立ち(会場一同笑)、オープンウェブの擁護者であり続けるよう励ました。翌朝、Drupal さんはすぐさまオープンウェブ宣言をしたためました。
オープンウェブ宣言の概要 Dries のキーノートスライドより
これには、オープンウェブという理念の成立は、参加や貢献の自由、独占性の排除、また一体性・多様性の支持などによって実現すること、また Drupal コミュニティーとその取り組みおよび成果物がそれを可能にすることが記されています。
Drupal のマーケティング
それでも暗い雲は濃くなる一方で、外部からは村が見えなくなりそうなほどでした。Drupal さんは、この暗雲を取り払うことができる 3 人の魔法使いに助けを請うのでした。
三人の魔法使い Dries の ブログポストより
ここで Drupal マーケティング委員会の 3 人がパネルとしてステージに登場し、今後の Drupal のマーケティング方針や戦略についての説明がありました。
最初に、Drupalcon Pittsburgh のあとに Drupal アソシエーションが批准した戦略的イニシアティブについての説明がありました。そのイニシアティブは以下の 3 つに分けられます:
- イノベーションへの投資
- マーケティング
- より多くの資金を Drupal コミュニティーにもたらす慈善活動
今まで、Drupal コミュニティーが本格的なマーケティングを行ったことは過去一度もありませんでした。そのため、開発会社がそれぞれ個別に Drupal のマーケティングに取り組んでいました。今後は Drupal コミュニティーがマーケットでのポジショニングを含め、マーケティング戦略を用意することで、一貫したマーケティングを可能にしたいとのことでした。
また、世界中の大学に働きかけることで学生が在学中に Drupal を学び、卒業後すぐに Drupal の利用や開発に携われることを目指すとのことでした。
デザイナー・マーケター・コピーライターから成る Promote Drupal イニシアティブにより、マーケティングの方向性に関して Drupal Association とコミュニティーの足並みをそろえ、一貫したブランドを保った Drupal のマーケティングを可能にすることで、Drupal の採用率を上げることを目指す、という説明がありました。
そして Drupal という CMS が多くの開発者たちの貢献から成るのと同様に、マーケティングの専門家が、コミュニティーを挙げて行うマーケティングの取り組みに貢献できる仕組みを設けることの重要性についても触れていました。
Q&A では「Drupal はマーケティング無しで 20 年以上生き残ってこれたのに、なぜ今になってマーケティングが必要なのか」という質問がありました。パネルの見解は「スタートアップを含む、市場にあふれる様々なプロダクトの中に Drupal が埋もれてきているため、あらためて Drupal の利点や強みを発信する必要があると考えている」とのことでした。物語りの一節「暗雲は濃くなるばかりで、外からは Drupal 村が見えなくなりそうな程でした」とは、このことだったのでしょう。
当初 Drupal は手軽な CMS だったものの、D8 のリリース後は特に大型で複雑なサイトの構築に特化したフレームワーク的存在となり、D10 からは再び手軽さを取り戻すことで多くの用途に使えるツールに変貌しつつあります。競合サービスやプロダクトが市場に溢れる今だからこそ、Drupal について正しい情報を発信していくことの重要さに注目が集まっているようです。
今後の展望
今後 1 年のあいだに行われる最も目立つ変更としては、以下の 2 つがあげられます:
- 2024 Q1/Q2: ブランディングのアップデート
- 2024/05: 新しい Drupal.org のプレビュー
その他の取り組みについては以下の通りです:
- 資金調達:常に実施
- 2023/12:マーケティングプランの確定
物語りの結末
サイトビルディング体験の向上、オープンウェブの支持、マーケティングへの投資という 3 つのイニシアティブにより暗雲は晴れ、Drupal 村は野心的な建設者にとって刺激的な場所となりました。そして村に移住してくる若者を見て、Drupal さんの心は弾みました。めでたしめでたし。
暗雲が晴れた Drupal 村 Dries のブログポストより
物語りを読み終えた Dries は最後に「ここから先の物語りは、今日から我々全員が書いていくことができます。そして物語りの続きを書くのには、皆さんの助けが必要です」と付け加えました。
まとめ
今回の Driesnote では、コミュニティーのフォーカスが CMS の機能やメンテナンス性の向上だけに留まらず、より広い視野のもとオープンウェブの擁護者としての宣言を行い、さらに Drupal 史上初めてマーケティングに本格的に注力する体制の確立など、Drupal の将来を見据えた非常に包括的なプランが共有されました。それぞれのイニシアティブが、今後どのような素敵な結果に繋がっていくのかに大きな期待が集まります。
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