ANNAIマガジン
Drupal logo
この記事は「 Why Drupal is the future of content strategy 」の翻訳です。
この記事の目次

Drupal は堅牢なコンテンツマネージメントシステムであるだけでなく、強力なデジタル体験プラットフォームでもあります。また、コンテンツ戦略においても重要な役割を担っています。

私は長年オープンソースを支持し、Drupalに貢献するなかで、組織が Drupal をどのように活用できるかについて考えてきました。また、デジタルエコシステムという大きな枠組みの中での Drupal の位置づけと、市場にある他の選択肢との比較について考えてきました。そして、新しいプロジェクトの戦略を練る際に、Drupal がどのようにその強みを生かすことができるかに思いを巡らせてきました。

Drupal はどのようにデジタル世界の現状にフィットするか

2022 年現在、ウェブサイトを立ち上げるのに要する時間は、一杯のコーヒーを淹れるのと大差ありません。これはウェブサイトが多くの類似した機能を持ち、もはやゼロから構築する必要がないためです。私がウェブの仕事を始めた頃は、Ruby on Rails のような柔軟性の高いフレームワークが魅力的に見えました。しかし、多言語コンテンツ、メディア管理、ワークフローなど、一般的な機能をカバーする標準的なソリューションがないため、プロジェクトごとにカスタム開発に膨大な投資が必要であることを程なくして知りました。

一方、ここ 10 年で登場した Wix や Squarespace などのウェブビルダーは、ドラッグ&ドロップによるウェブサイト構築やカスタマイズ可能なテンプレートなど、夢のようなサービスを提供しています。しかし実際のところ、その柔軟性は非常に表面的なものです。その限られた柔軟性ゆえに、強固なコンテンツモデルの構築およびデジタル体験の作成を可能にしたり、大規模な組織が必要とするコンテンツコンプライアンスの基準を満たすことはできません。

そのような場面で注目されるのが Drupal です。Drupal はインストール直後から即座に使用可能な強力な機能や、コンテンツに基づいたカスタム機能を構築するためのツールを提供してくれます。

コンテンツ管理システムとしての Drupal

私が 15 年前に Drupal を使い始めたとき、Drupal はコンテンツマネージメントシステムとして紹介されていました。ウェブマスターやウェブデベロッパーに頼るのではなく、サイトにログインして編集者としてコンテンツを管理することを可能にしていたためです。

さらに Drupal は、コンテンツの作成だけでなく、コンテンツモデルの編集機能も提供していました。サイトビルダーは、コードを書くことなく設定画面から Drupal を拡張することができました。これは当時流通していたフレームワークとは一線を画すものでした。長年 Drupal の使い方を教えるなかで、Drupal の管理画面を通して出来ることの多さや、それを楽しく使いこなす人達を多く見てきました。

これは現在も変わらない Drupal の強みです。コンテンツだけでなく、コンテンツをどのように構成するかをコントロールできることや、タクソノミーとローカライゼーションが Drupal のコンテンツモデルに組み込まれていることは、限定的なコンテンツの概念しか持たない他のシステムに対して大きなアドバンテージとなっています。

Drupal というプラットフォーム

Drupal を弊社の根幹技術として採用した直後から、私はこれをプラットフォームと呼ぶようになりました。野心家だった 20 代の私は、コンテンツリッチで見栄えのするウェブサイトを作るだけでなく、もっとパワフルなウェブサイトを作りたいと強く思っていました。情報の流れを整理するための、より強力なツールを作りたいという野望があったのです。例えば、Drupal を他のシステムと統合して、コンテンツの周りに機能性やワークフローを構築することです。また、CRM と Drupal の間でコンテンツの同期を行うこともできます。多様なコンテンツソースを検索できるインターフェイスを構築し、新しい方法でコンテンツをフィルタリングすることも可能です。

このようなアーキテクチャに適応できるという事実が、Drupal を他の CMS と大きく差別化する要素となっています。大規模な組織の開発者のチームや IT リーダーは、Drupal のような機能要件に柔軟に対応できる技術の採用が重要であることを理解しているでしょう。

デジタル体験プラットフォームとしての Drupal

これらの属性は今でも非常に魅力的ですが、最近 Drupal はデジタル体験プラットフォーム(DXP)と呼ばれています。Drupal が他のプロプライエタリな DXP と大きく異なるのは、オープンであることです。Drupal を用いることで、あらかじめ組み込まれた技術スタックに縛られることなく、スタックのデザインを自由に決定できます。マーケティングの統合であれ、マルチチャンネル体験であれ、コンテンツが Drupal にどのようにインプットされ、Drupal からどのようにアウトプットされるかを決定することができるのです。この柔軟性は Drupal の強みの 1 つです。しかし、マーケティングツールセットを完備する他の DXP に対抗して Drupal を売り込む際には課題もあります。

マーケティング担当者はしばしば、パッケージ化されたソリューションの導入を望みます。Drupal と一連のツールをパッケージにすることは可能ですが、他の DXP のような即戦力のソリューションとして Drupal を販売するのは難しいのです。

コンテンツ戦略プラットフォームとしての Drupal の強み

ではマーケターにとって、Drupal はどのような位置づけになるのでしょうか?Drupal の強みは、やはりその柔軟なコンテンツアーキテクチャーにあります。つまり、コンテンツ戦略やコンテンツガバナンスプランを実施するうえで Drupal は理想的なプラットフォームなのです。これら 2 つは、多くの組織が見落としている Drupal の利点であると共に、マーケティング担当者が Drupal のようなプラットフォームを採用する理由でもあります。

Drupalでより良いコンテンツ戦略を

Drupal はあらゆる組織のコンテンツ戦略に適応することが可能ですが、すべての Drupal ウェブサイトが強力なコンテンツ戦略を持っているというわけではありません。Drupal でサイトを構築する際には、コンテンツとコンテンツエディターのニーズを積極的に優先していく必要があります。これはつまり:

  • 組織構造ではなく、ユーザーのニーズに合わせたコンテンツの整理
  • 再利用可能、適応可能、パーソナライズ可能、翻訳可能なコンテンツの構造化
  • コンテンツを API 経由で利用できるようにし、デジタルサービスと統合
  • コンテンツのコンプライアンスを体系的にチェックするためのツールの設置

一方、ウェブサイト以外の点では、ベストプラクティスを用いてコンテンツ戦略の実践に優先順位をつける必要があります。これはつまり:

  • 広報担当に相応の権限を与え、コンテンツエディターをファーストクラスのユーザーとして扱う
  • ウェブパブリッシングのベストプラクティスを組織全体で共有する
  • 明確で実行可能なコンテンツガバナンス計画の策定
  • コンテンツガバナンスを促進するデジタルアセットマネージメント(DAM)ツールなどの活用
  • コンテンツエキスパートとユーザー間のコンテンツとフィードバックのスムーズな流れの構築

パーソナライゼーションが可能なプラットフォームへの新たな期待が高まり、またリブランディングや全く新しいマーケティング戦略の導入のサイクルが早くなる中、ウェブサイトがコンテンツ戦略を支援するツールであることがこれまで以上に重要になってきています。強力なコンテンツ戦略に基づいて業務を行う方法を探しているのであれば、手始めに以下を行うのが良いでしょう:

  • 新しいウェブプロジェクトの立ち上げ時に、コンテンツエディターをプロセスに参加させる
  • 技術だけでなく、コンテンツのニーズを反映したドキュメントを作成する。ドキュメントに実際のコンテンツの例を使用することで用途を分かりやすく説明する
  • 3 ~ 5 年ごとにコンテンツを刷新する大型プロジェクトに頼らず、継続的なコンテンツガバナンスを優先する
  • ウェブサイトをリニューアルする際、コンテンツをそのまま移行するのではなく、レガシーコンテンツをクリーンアップするための投資を行う
  • コンテンツエディターの体験改善に投資する。Drupal は継続的にこれを行っているが、プロジェクトごとに積極的に努力する必要がある

結論から言うと、Drupal は CMS と DXP の両方を兼ね備えています。しかし、これは重要な点ではありません。Drupal というプラットフォームを最大限に活用するために必要なのは、Drupal の機能を活用し、強力なコンテンツ戦略を構築することです。

この記事は、著者による DrupalCon Portland での講演をもとに書かれています: Future of content management: using Drupal as a content strategy platform.

 
フッターの採用情報
 
ANNAI株式会社の写真

この記事を書いた人: ANNAI株式会社

ANNAIは、2009年からDrupal専門のWebシステム開発会社として、世界規模で展開するグローバル企業や大学・自治体を中心に数多くのWebソリューションを提供。
CoreやModuleのコントリビューターなど、Drupalエキスパートが多数在籍。国内ユーザーコミュニティへも積極的にコミットし、定期的なセミナーの等の開催を通じて、オープンソース技術の普及や海外コミュニティとの緊密な連携を図っている。
Webシステムの企画・開発〜デザイン、クラウド運用までをワンストップで提供する他、Drupalのコーディングを評価する"Audit業務"や最適なモジュールの調査・選定等、幅広いコンサルティングを行っている。Drupalアソシエーション公式パートナー。

関連コンテンツ