Drupal 8 海外事例:カーライルグループ
カーライルグループは1987年に設立された、世界最大規模の最も成功した投資会社の一つです。カーライルグループは128のファンドと159の金融商品を運用し、1,930億円の資産を管理しています。
2012年にカーライルはDrupal 6でサイトを立ち上げました。しかし、2015年までこのサイトではレスポンシブデザイン、高トラフィックな時期の表示速度の改善、多言語対応など、世界中の閲覧者の要求を最大限に満たす事ができませんでした。
このプロジェクトでは、2万を超える莫大な量のコンテンツの移行を検索順位を落とさず、スムーズに実施する必要がありました。
なぜDrupalを選んだのか?
Drupal 8はレスポンシブ対応で、合理的な管理画面を持ち、カーライルが長年にわたり蓄積したコンテンツを柔軟性に活かすことのできるコアモジュールを備えているプラットフォームだからです。
また、カーライルは今注目を集めているDrupal 8の新しい機能を一早く利用し、新しい設定機能やテーマシステムを探求したいと考えていました。
プロジェクトについて
カーライルは元のDrupal 6サイトと同じテーマとデザインのまま、機能を拡張する事を希望していました。最も重要視されたことは、コンテンツの編集のしやすさでした。巨大なカーライルグループには、コンテンツ管理者、翻訳者、マーケッター、サイト管理者などの多くの役職が存在します。そして、それぞれのユーザーは自分の役職に応じた適切な権限を持ち、目的に応じそれぞれの役職に応じた行動をする必要があります。
私たちの主な目標は、サイトの複雑さを改善し、コンテンツ編集を簡素化する事でした。コンテンツ編集のワークフローを強化するために、動的なコンテンツが再利用しやすいようにしました。他には以下の事柄が要求されました。
- 2万を超えるコンテンツの移行
- サイト上の情報のドラッグ&ドロップ機能
- 全てのコンテンツとメニューが編集可能であること
- 多言語対応(英語、日本語、中国語)
- SEO対策
- ページのレイアウト変更やカスタマイズが可能であること
多言語対応
Drupal 8の強力な多言語機能は、カーライルのようなエンタープライズレベルのビジネスを支えるのに十分な機能をシームレスに提供します。
私たちが開発したレイアウトモジュール、Build Labはサイトの柔軟性とカスタマイズ性をより強化します。このモジュールは管理者にメインサイトのレイアウト変更を可能にするだけではなく、翻訳版のサイトのレイアウト変更も可能にします。
ホームページのレイアウト変更機能
カーライルは金融資産管理の世界的なリーダーです。彼らの一流の評判は世界中からクライアントを引き付けています。クライアントの多くはカーライルの行う最新の買収や投資情報を待ち望んでいます。コンテンツへの飽くなき欲求は高いトラフィックを生み出します。
そして、これに対応するための基盤が必要となります。そのため、カーライルはメジャーなTVネットワークや新聞、ワシントンポストなどの金融関係の出版物などで多く取り上げられる、何百ものストーリーやビデオ、フォトギャラリーを年度ごとに作成、公開しています。
このため、カーライルは週単位で新しいコンテンツをドラッグ&ドロップで柔軟かつ簡単にカスタマイズが可能なフレキシブルなホームページグリッドを必要とします。この機能を実現するために、私たちはドラッグ&ドロップによるBuild Labという管理システムをカスタマイズで実装しました。この独自モジュールを利用することで、カーライルチームはメインサイトだけではなく、日本語、中国語版のサイトのレイアウトも自由にカスタマイズする事ができます。
Build LabはDrupalのコンテンツ作成をシンプルにかつ柔軟に実現するための製品です。Build Labを利用することで、再利用可能な独自性のある様々なタイプのコンポーネントでページを構成する事が可能になります。
そして、ページ上にドラッグ&ドロップで要素を配置し、簡単にリサイズすることもできます。ページのレイアウトは用途に応じて一覧から選択する事が可能です。Build Labによりページ上の要素を直感的な操作で作成、変更、配置する事ができます。
コンテンツタイプ
カーライルは6大陸、21か国に35のオフィスを持つ大規模なチームです。そのため、直感的でシンプルな管理画面が最優先で求められます。私たちは管理画面をシンプルにするために、コンテンツタイプを46から10に減らしました。元々、ハードコードされていた大量のコンテンツタイプを10種類のコンテンツタイプに割り当てるのは簡単ではありませんでした。
Notrh StuidoチームはAsset Classesから始まるコンテンツタイプのデータ階層を作成し、新しいコンテンツを追加する際の使いやすさを考慮して、異なるコンテンツタイプがラベル付けされるようにしました。
これらすべてのコンテンツは公開しやすいだけではなく、検索のされやすさの観点からも優れています。Drupal 6で作成されていた旧サイトは主にPanelsモジュールに依存していたので、コンテンツが検索インデックスの対象になりませんでした。私たちはコンテンツを直感的に扱えるようにすると同時に、SEO強化のためにキーワードを最適化したページの作成にも重点を置きました。
移行
次に私たちを待ち受けていた技術的なハードルは、2万を超えるコンテンツと4000を超えるノードを新サイトへ移行する事でした。さらに、これらのコンテンツは全て日本語と中国語版のページを持つため、これらの移行はさまざまな面で困難を極めるタスクでした。
旧サイトのコンテンツを新サイトへ移行するにあたり、作業効率と時間を最大にするためにプログラミングを利用しました。このプロジェクトの最中にはまだ、翻訳コンテンツの移行機能はDrupalのcoreに実装されていませんでした。
私たちのアジャイルチームは親ノードとその翻訳コンテンツを移行するにあたり、翻訳コンテンツの移行が、その親ノードに従って実施されるようにカスタムコードを書いて対応しました。これにより、コンテンツを正しい順番で作成することができました。また、整理されていないファイルについてはファイルエンティティとして保存するようにしました。
結果
- ワイドスクリーン画像が特徴のレスポンシブ対応のテーマ開発
- 管理画面の簡素化のため、46あったコンテンツタイプを10に削減
- ホームページのレイアウトを変更するための管理者向け機能
- コンテンツ作成機能の簡素化
- 多言語対応(英語、中国語、日本語)
- 広範囲におけるQAテストによる優れたUXの提供
- Google AnalyticsとGoogle Tag Managerの実装
- サイト内検索の改善
- 2万以上のコンテンツと4千以上のノードのシームレスな移行
- 数回のコードレビューによる堅牢で直感的な管理画面
最後に
Drupal 8では多言語機能が大幅に改善されています。今回のカーライルグループの事例のように、多言語サイトを構築する場合にはDrupal 8の改善された多言語機能を利用すると、スムーズに多言語対応のサイトを構築する事が可能です。
ただ、Drupal 7に比べて利用可能なモジュールの数がまだ少なく、複雑な機能の実現にはカスタマイズが必要な側面もあります。納期、予算、実装機能などを総合的に考慮した上で、Drupal 7とDrupal 8のどちらで開発を行うかを検討する必要があります。
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